『岸辺露伴は動かない』はなぜ心に響く? 尽きることのない探究心と人間讃歌

『岸辺露伴は動かない』が心に響く理由

 昨年末、NHK総合にて放送されて話題を呼んだ、高橋一生主演のドラマ『岸辺露伴は動かない』。その待望の続編が、本日(2021年12月27日)から3夜連続で放送される。

 原作は、荒木飛呂彦の人気コミック、『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品。タイトルにある「岸辺露伴」とは、「ジョジョ」シリーズの第4部に登場するサブキャラクターのことだが(職業は漫画家)、こちらのスピンオフでは堂々の主人公である。

 毎回、よせばいいのに、危険な場所までわざわざ出かけて行って、当然のように危ない目に遭い、ある“異能”を発現させてピンチをくぐり抜けた末に、「二度と来るつもりもない」(エピソード05「富豪村」より)などと言いながら、「杜王町」へ帰ってくる(そして、「漫画の取材」と称して、懲りもせずに同じようなことを繰り返す――)。つまり、タイトルに反して、岸辺露伴は結構「動く」のだ。

 ある“異能”とは、「ヘブンズ・ドアー」。人間や生物を「本」にして、その情報(過去)を読み取ったり、新たな事項を書き込んで、対象を操ったりすることができる力だ。

 なお、荒木の原作ではこうした異能のことを「スタンド」と呼んでいるが、ドラマ版では「ギフト」という呼び方に変更されている[注1]。

[注1]文字数の関係で詳細は省くが、超能力をかつてない形でビジュアル化した、荒木の“発明”とも言える「スタンド」の概念を理解することは、ふだん漫画を読み慣れていない人たちにとっては、ややハードルが高いものだと思われる。また、ドラマ『岸辺露伴は動かない』は、基本的に、『ジョジョの奇妙な冒険』本編とはつながりのない物語として描かれており、そういう意味でも、「スタンド」から離れる必要があったのだろう。

おもしろい漫画を描くためにはどんな危険も厭わない

 それにしても、岸辺露伴というキャラクターのなんと魅力的なことか。最初は主人公たちの“敵”として現われ、知らず知らずのうちに“仲間”になっている。だが、それはあくまでも共通の敵がいるからであり、仲間は仲間でも、決して馴れ合うような間柄になることはない。

 そんな彼が何よりも重視しているのは、「おもしろい漫画を描くこと」。そのためには「リアリティ」が必要であり、それを知るには、さまざまな体験=取材をしなければならない。だから結局、次々と危ない橋を渡ることになる。おまけに根が負けず嫌いだから、事態はどんどん悪化することに……。

 敵の行動を自在に操ることができる「ヘブンズ・ドアー」は、空条承太郎(=第3部の主人公で、第4部にも登場する)の「スタープラチナ・ザ・ワールド」などとともに最強のスタンドのひとつと言っていいと思うが、時にはその能力が効かない相手と出くわすこともある。

 それでも、最終的には、なんだかんだでピンチを切り抜けることはできるのだが、「危なかった……恐ろしいやつだ」(エピソード02「六壁坂」より)とか、「近づいたのが間違いだった……」(エピソード09「ザ・ラン」より)とか、ぶつぶつ文句を言いながらも(反省しながらも?)、気がつけばまた、新たな危険な場所へと向かうのだ。

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