『岸辺露伴は動かない』はなぜ心に響く? 尽きることのない探究心と人間讃歌
好奇心と行動力が世界を変える
ちなみに、呼ばれてもいないのにどこからともなく現れて、世界をぐちゃぐちゃにかき乱した後に去っていくキャラクターのことを、「トリックスター」と呼ぶ。
むろん、その種のキャラクターたちは、世界を破壊するだけでなく、再生もさせるわけで、人を本にして“中身”を書き換えることができる岸辺露伴もまた、ある種のトリックスターだと言えなくもないだろう。
いずれにせよ、強い「好奇心」と「行動力」を持っている者だけが、世界を広げ、人生を楽しめるのだということを、彼は、(あるいは荒木飛呂彦は)知っている。そして、その根底にあるのは、「真実を知りたい」という尽きることのない探究心と、(「ジョジョ」シリーズ全編に通じるテーマでもある)「人間讃歌」の熱い想いだ。
だからこそ、岸辺露伴が、(あるいは荒木飛呂彦が)描く漫画は、一見不気味で「奇妙な」世界でありながら[注2]、多くの人々の心に響くのではないだろうか。
[注2]岸辺露伴のヒット作『ピンクダークの少年』は、あるキャラクター曰く、「生理的にキモチ悪いシーンもある」が、「せまってくるようなスリルと本当にいるような登場人物がいい」サスペンス・ホラー。