『かげきしょうじょ!!』沢田千夏と千秋は共依存からどう抜け出した? 異なる個性が花開くまで
以後、物語では千夏と千秋の異なる個性が花開いていく。なかでも授業の実技として演じた「オルフェウスとエウリュディケ」をめぐるエピソードでは、千夏が奈良田愛と、千秋が渡辺さらさとコンビを組み、それぞれのアプローチで役作りをしていくのが興味深い。
千秋とさらさは、千秋の性格そのままの「我儘バンビーナ」なエウリュディケと、その全てを受け止める包容力をもつスパダリオルフェウスという演技プランを立てていた。だがいざ始まるとさらさの暴走スイッチが入り、演技は残念な結果に終わってしまう。千秋は怒るが、それでもさらさとのコンビを解消せず、再度の挑戦を誓うのだった。
そして奈良田愛は、この演目では男役のオルフェウスに挑む。エウリュディケを演じる千夏とともに、異彩を放つ演技プランや、巧みなフォーメーションを見せつけた。
コミックスの10巻の表紙はさらさ&千秋、11巻は愛&千夏が描かれている。同じ「オルフェウスとエウリュディケ」なのに、どこまでも陽気な千秋たちと、陰りを帯びたシリアス調の千夏コンビの姿は対照的だ。
最近の千秋は妹気質が全開だが、そんな彼女がさらさと衝突しながらも演技と向き合っている姿は微笑ましい。キュートな沢田姉妹には、成長をみせながら、これからも物語をかき回してほしいものである。