人気沸騰!桂浜水族館・おとどちゃんが語る次なる野望 「映像という形でハマスイの物語を残したい」

桂浜水族館・おとどちゃんが語る野望

 高知県・桂浜水族館の公式マスコットキャラクター「おとどちゃん」のエッセイ『桂浜水族館ダイアリー』が11月25日に発売された。

 SNSに投稿されたイケメン飼育員の写真やおとどちゃんの前衛的なツイートが話題となり、2021年の水族館ランキングで第1位に選ばれた桂浜水族館。しかし、そんな人気を得るまでには様々な苦労があった。

 2016年に全国的なニュースとなった、職員一斉退職を機に桂浜水族館は「なんか変わるで、桂浜水族館」をモットーに本格的な改革をスタート。このとき生まれたのが、おとどちゃんだ。本作では彼女の誕生から現在に至るまでの、飼育員や生きものたちとの日々が宝石のようにキラキラと輝く景色とともに綴られている

 リアルサウンドでは、お仕事のため東京にやってきたおとどちゃんにインタビュー。執筆活動の裏側や、今や高知県だけではなく全国に存在する“ハマスイファン”への思いを語ってもらった。(苫とり子)

【インタビューの最後にプレゼント企画あり】

執筆は23時からスナックで……?

――まずは初のエッセイ本『桂浜水族館ダイアリー』の発売おめでとうございます! 水族館の公式マスコットキャラクターが作家デビューというかつてない取り組みですが、最初は光文社さんからどのようなオファーを受けたのでしょうか?

おとど:ありがとう! まさか自分も作家デビューするらぁて思っちゃあせんかったき。きっかけは、2020年の7月末に届いた一通のメール。ハマスイのTwitterを見てくれた編集者さんが「おとどちゃんのツイートが面白いので、水族館を舞台にしたエッセイを連載しませんか?」と声をかけてくれたがよ。

――広報として日々ハマスイの魅力を発信されているおとどちゃんですが、毎月長文のエッセイを連載することに迷いはありませんでしたか?

おとど:もちろん月に8000字も書けるがやろうかって不安もあったし、館長からも「普段の業務をこなしながらできるかえ?」って心配されました。でも未体験なことに挑戦したかったし、SNSだけじゃあ発信しきれてない思いを伝えたかったき、オファーを受けました。

――実際に、作家としてエッセイを執筆してみていかがでしたか。

おとど:大変やったけど、楽しかったです。自分の中で燻っちょったものが、一つの形として昇華できる感覚が「気持ちいい~~!」って感じでした。ただ、担当の編集者さんから直しが返ってきた時に、自分が今まで使いよった言葉の意味がまったく違って驚くことも多かったです(笑)。

――ちなみにおとどちゃんの1日のスケジュールはどのような感じなのでしょう。

おとど:よくファンの方に「水族館に行ったら会えますか?」って訊かれるがやけど、お客さんがおる場所に顔を出すことはあんまりなくて、基本的には地下にあるおとどの部屋に閉じこもっちゅう(笑)。イベントがあったり、呼び出された時は出て行くけど、一日中Twitterを更新したり、いただいたメッセージに返信したり、人生相談やお悩み相談に答えたり、掲示物を作ったり……。中でも一番大変やけど一番大好きな仕事(?)は一階事務所で館長と話すこと(笑)。終業後は深海にある実家でスナックをやってます!

――ではかなりハードなスケジュールの中で、執筆時間も取られていたんですね。

おとど:水族館におる時に執筆することもあるがやけど、館長と話しよったらつい盛り上がって執筆どころじゃなくなるき、大体は家に帰って落ち着いた夜の23時~24時くらいから書き始めてました。

――何度か締め切りに関するツイートもされていましたが、やっぱり働きながらの執筆活動は大変でしたか。

おとど:毎回1カ月執筆期間を設けてもらっちょったがやけど、間に合わんこともありました。書く時間とかネタがないっていうよりは、早く提出して翌日以降に面白いエピソードが生まれたらもったいない!と思って(笑)。毎日いろんなことがあるき、全部取りこぼしたくなくてつい後回しにしていました。

――それくらい、毎日印象的な思い出がハマスイで生まれているんですね。エッセイでもエピソードともに、その時の景色や飼育員さんたちの表情が素敵な描写で綴られていますが、普段からおとどちゃんは日記をつけられているのでしょうか?

おとど:特に日記はつけやぁせんけど、その時の会話や表情、色彩や温度などを、より鮮明に伝えたくていつも持ち歩きゆうノートにメモしてます。あと、本や歌のフレーズ、テレビや映画の描写、誰か同士の会話など、とにかく自分の心にささった表現も、自分の表現にできるようにメモしてます!

飼育員とおとどちゃんの関係性

――ハマスイでは一人ひとりの飼育員さんたちが生き物の名前で呼ばれていますが、今回のエッセイで名前を出さなかったのは意図があってですか?

おとど:Twitterやファンブックなどを通して、すでにハマスイを知ってくれちゅう方とかファンの方やったら、きっと誰のことかわかるエピソードもあると思うがね。でも見ず知らずの方が読んだら、「これって誰のことながやろう?」って気になるやん?!このエッセイを読んで、想像を膨らませたり、後から調べることで、ハマスイにもっと興味を持って沼にハマってくれたら……(笑)って思って、名前は記載しませんでした。

――たしかにエッセイにはある飼育員さんのポエムやラップが載っていたり、気になる特徴が満載です(笑)。またいつもSNSで見る写真もそうですが、おとどちゃんの飼育員さんたちに対する温かい目線が印象的でした。普段の業務の中でどのようにコミュニケーションを取られているのでしょうか。

おとど:どっちかっていうと、飼育員の方から話をしに来てくれる。何気ない時に「ちょっと話聞いてよ」とか、「これ見て~」とか。フランクに話しかけてくれるき、自然とコミュニケーションを取る機会も多いです。あとは、業務外になるけど、仕事終わりにいっしょにご飯を食べに行ったり、「〇〇の会」と称して夜な夜な行う飲み会も、普段は言えんかったり、シラフでは気恥ずかしいことも話せちゃったりして……(笑)。ぶつかり合う時ももちろんあるけど、それもまたコミュニケーション。みんな学校を卒業してすぐ桂浜水族館に入社し、高知でひとり暮らし。寂しい夜はいっしょにご飯を食べて温め合う。愛おしい存在です。

――そういった会話の中からポロッと飼育員さんたちの悩みが出てきたりするんですね。今回のエッセイに関して、飼育員さんたちからはどんな反応がありましたか?

おとど:まるのんからは「俺のこといっぱい書いてるからお金ちょうだい」って出演料をねだられたけど、丁重に断りました!!!(笑)

――たしかに、まるのんさんのエピソードはたくさん登場していました(笑)。飼育員さんをはじめ、ハマスイで働く方々の悩みや葛藤も包み隠さず綴られていましたね。

おとど:みんなそれぞれの壁にぶつかって、ちゃんと悩み、苦しみ、これまでの自分を変えようと頑張ってきました。そういう努力とか頑張りって、本当は見せん方がかっこいいがかもしれん。でも、いや、だからこそ知ってほしいと思いました。水族館は結構入れ替わり立ち代わりが激しい業界で、実は、桂浜水族館も3年おったら長い方やったり……。私もこの数年でいろいろなスタッフとの出会いと別れを経験してきたけど、ひとつひとつなんか変わりゆく中で、ひとりひとりが成長し、変化し、次第に「みんなで(創業)100周年を迎えよう」っていう結束力が生まれてきたがやと思います。

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