佐久間由衣、24時間で作り上げた写真集『SONNET』を語る「数日間、余韻が抜けなかった」

佐久間由衣、写真集『SONNET』を語る

 女優の佐久間由衣が11月4日に初の写真集『佐久間由衣写真集 SONNET 奥山由之撮影』(マガジンハウス)を発売した。カメラマンは、佐久間由衣自身の希望により、写真家・奥山由之が担当。「濃密な24時間」を切り取った一冊となっている。

 大きく笑い、大きく動く。女優の写真集とは思えないほどの開放感は、どこかノスタルジックで、無邪気に、目の前にあるものに一直線に向かっていけた子ども時代を思い出させる。撮影を通して、また仕上がった一冊を見て、佐久間由衣は何を感じたのだろうか? 本作に込めたこだわりと見どころを聞いた。(とり)

奥山由之の作品集としての側面も

――奥山さんに撮影をお願いしたのは佐久間さん自身のご要望だったらしいですね。

佐久間:はい。もともと奥山さんの写真のファンで、いつか写真集を作ることがあったらぜひ奥山さんにって、密かにずっと思っていたんです。過去に雑誌の企画で4回ほど撮っていただいたときの写真も、すごく気に入っていましたし。まさか本当に実現するなんて、思ってもいなかったです。

――そうだったんですね。では、本作を撮影するときには、既に奥山さんとの関係性もある程度できあがっていたんでしょうか?

佐久間:いやぁ……、それが、これまでご一緒させてもらったときは、私が人見知りすぎてなかなか話せずじまいだったんです。はじめてお会いした19歳の頃から奥山さんの写真が大好きだったのに、そのときは一言も話せずに終わりましたから(笑)。

 そういう意味でいうと、本作は、私の素が表れた写真集ではあるものの、程よい距離感と緊張感を保ったまま撮影していただけた実感がありました。素とはいえ、家族や友達に見せる素とはまた違うというか。奥山さんに対するリスペクトの念は常に持っていましたしね。それでも開放的な気持ちになれていたのは、すごく新鮮な感覚でした。

――ちなみに、奥山さんの写真のどのようなところに惹かれますか?

佐久間:奥山さんの写真のなかでは、空も、地面も、野花でさえも、全てがアートのように写っているんです。奥山さんの視点からは、こんな風に世界が見えているのかって思うと面白くて。全部フィルムカメラで撮影されているのも、今どき珍しいですしね。それから、人物を撮るときに、シャボン玉やおもちゃを用いた素敵な演出をされることがあるんですよ。そのユニークなアイデア性にもグッときました。気付けば、作品集を買って見るほどの大ファンになっていましたね(笑)。

――その奥山さんの写真の世界観に自分の姿があるというのは、どのような感覚ですか?

佐久間:最初は不安と緊張が大きかったです。というのも、撮影に行く前に、私の写真集でありながら、奥山さんの作品集としての意味合いも含んだ一冊にしてほしいと、欲張りな要望をさせてもらっていたんですよ。奥山さんの写真が好きだからこそ、奥山さんの写真として撮っていただきたかったので。

 ただ、何の心配もいらなかったですね。あがってきた写真を見させていただいたとき、そこにはちゃんと奥山さんの世界観が広がっていて、やっぱり奥山さんの写真が好きだなぁと再確認するばかりでした。そんな一作品ができあがったことが、今とても幸せです。

開放的な24時間

――紹介文に「濃密な24時間」とありますが、具体的な撮影スケジュールを教えてください。

佐久間:お昼過ぎに島に到着して、そこから翌日のお昼過ぎまで撮影って感じでしたね。ガッツリ、24時間です。今までにないくらい集中力が働いた撮影でした。

――本当に24時間で撮ったとは思えないくらいのボリュームです。動きを感じる写真が多いのも、見ていて楽しいです。

佐久間:どれも躍動感がありますよね(笑)。日が暮れてからは比較的のんびり撮影していたんですけど、その前後は、奥山さんから「走って!」「転んで!」と言われながら、思いっきり体を動かして撮影していました。なかにはガチ転びしたカットもあるんですよ。衣装が汚れちゃったから、あとでスタイリストさんに謝らないとねって話をして(笑)。それを機に、もっと寝っ転がってみるのもいいかもねって、どんどん大胆に動くようになって。

――笑顔のカットの多さから、奥山さんとコミュニケーションをとりながら楽しく撮影されたのが伝わってきました。ここまで開放的に自分を表現することに抵抗はなかったですか?

佐久間:これまでカメラの前に立つといったら、常に”自分ではない何か”を見せるときでした。例えば、ファッション誌だったらお洋服を見せるし、取材を受けるときは作品の魅力を伝えようとする。自分を前面に出す機会が少なかったんですよ。でも、今回は”私”が主体となって、”私”自身が作品となるわけで。その撮影を奥山さんにお願いしたのも、”私”の気持ちがあってこそです。だから確かに開放感はありましたが、「全てをさらけ出そう」と意識したというよりは、ただ楽しんで撮影ができればそれでいいのかなって気持ちで臨んでいましたね。

――その開放感というのは、コロナ禍で仕事が制限されていた時期の閉塞的な日常があったがゆえでもありますか?

佐久間:そうですね。最初の打ち合わせは、コロナがここまで酷くなる前だったんですけど、具体的にいろいろ決めていくなかで、次第に大変な状況になってしまって……。それもあって、スタッフさんを含めたみんなで「開放的な時間を切り取った写真集にしたいね」って話はずっとしていたんです。東京から少し離れた場所で、大雨に打たれたり、風に吹かれたりして、自然と気持ちも開放的になりましたね。私にとってもご褒美みたいな時間でした。

――子どもの頃を思い出すかのような、開放的な佐久間さんの姿に元気付けられる写真集でした。最近、こんな風に大きく笑えていたかな?と。コロナ禍を過ごす今だからこそ、よりそう感じられたというか。

佐久間:ありがとうございます。そう感じていただけたのなら、私としても嬉しいです。

――24時間ギッシリ撮影するなかで、奥山さんの写真に対する理解も改めて深まりましたか?

佐久間:どうなんでしょう。今回は24時間という限られた時間での撮影だったので、奥山さんにとっても普段とは違う感じだったと思うんですよね。ただ、撮られているときよりも、あがってきた写真を見たときに「この景色は、奥山さんの視点だとこんな風に写っていたんだ」と知れたのは大きかったです。フィルムカメラだと、その場で写真の確認ができないですからね。奥山さんが「現像したフィルムを見たときに、もう一度写真を撮った気分になった」と仰っていたのも印象的でした。

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