『呪術廻戦』血縁のしがらみを呪いとして描く“現代性” 少年漫画のイメージを覆す凄惨な暴力描写がすごい

『呪術廻戦』凄惨な暴力描写と“現代性”

 『呪術廻戦』(集英社)の第17巻が発売された。芥見下々が「週刊少年ジャンプ」で連載している本作は、呪術高専(東京呪術高等専門学校)に編入した虎杖悠仁が伏黒恵たち呪術師の仲間と共に呪霊を祓うオカルト・バトル漫画だ。

 昨年のアニメ化をきっかけに人気が爆発し、電子書籍も含めたシリーズ累計発行部数は5500万部を突破。12月24日には『呪術廻戦』の前日譚(第0巻)となる『東京都立呪術高専専門学校』が『劇場版 呪術廻戦0』としてアニメ映画化されることも決定しており、その勢いは日々加速している。

 一方、本誌連載は呪術師と呪霊の総力戦となった渋谷事変を終えて、折返し地点を向かえている。虎杖たちの戦いはより過酷なものとなり、序盤から描かれてきた「死」をめぐる問いかけは、更に深みを増している。

 以下、『呪術廻戦』17巻ネタバレあり。

 前日譚の主人公だった乙骨憂太が虎杖の死刑執行役として登場する衝撃の展開からはじまり、各地に張られた結界(コロニー)の中で呪術を与えられた者達が殺し合う「死滅回游」といった、新キャラや新設定の情報が小出しにされた第17巻だが、何より印象に残ったのは「少年漫画でここまでやるのか?」というハードな物語と凄絶な暴力描写である。

 渋谷事変で多くの仲間を亡くし一般人が犠牲になってしまったことを、虎杖は「自分の責任」だと悩み苦しんでいた。大勢の人間が命を落としたのは(虎杖の中にいる)呪いの王・両面宿儺の戦いに巻き込まれたからであるため、彼自身には責任がないように読者としては思うのだが、そこで「自分が殺した」と思ってしまうのが、虎杖の優しさなのだろう。特急呪霊・真人によって改造人間にされた人々を倒した時も、虎杖は「人を殺めた」と感じていた。

 祖父の死に立ち会った虎杖は、天寿を全うできた死を「正しい死」、呪霊に殺される死を「間違った死」だと直感的に感じた。だからこそ、宿儺の指を体内に取り込み、呪術師として呪霊と戦うことも迷わなかった。だが、物語が進むにつれて「正しい死」と「正しくない死」の境界が、虎杖にはわからなくなっていく。同時に呪霊と人間の境界も曖昧になっていく。

 本作は設定が複雑で、呪霊の他にも呪骸、受胎九相図、呪具、呪物といった呪いの影響を受けた生物や武具が多数登場する。そして、呪力を持った人間は呪術師、呪力を持たない人間は非術師、夏油傑のような闇落ちして一般人を殺害した呪術師は呪咀師と、呼び方が細かく分類されているのだが、呪いが人間(非術師)から生まれる以上、呪霊や呪骸もまた、人間の一部と言えるのかもしれない。

 物語こそ、「ジャンプ」が得意とするゲーム的な異能バトルの最先端だが、劇中では死にまつわる葛藤と、人間と“人ならざるもの”の境界をめぐる問いかけが繰り返されており、そのテーマ性によって、とても現代的な作品となっている。この17巻では、人語を理解し感情を持つ呪骸のパンダを生み出した夜蛾学長の過去が描かれた第147話と、禪院真希が禪院家の人間を皆殺しにする戦いを描いた第148話~152話に、そのテーマが色濃く現れている。



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