【犬画像たっぷり】11月1日は“犬の日”! 『デナリ』『少年と犬』『とにかく散歩いたしましょう』……犬の尊さを伝える名著

犬の愛の深さが伝わる名著たち
デナリとベン・ムーン

 順風満帆に見えた生活だったが、ベンはあまりに若く、メラニーとの結婚生活は長く続かなかった。しかし、将来への不安に押しつぶされそうな毎日の中で、ベンはアウトドア写真家になるという夢を抱くようになる。登山用品メーカーのメトリウスで働きながら、生活費を切り詰めてカメラの機材を買い、デナリとクライミング旅行にいく日々を過ごす。彼らの住まいはスバルのワゴンで、今流行りの車中泊といえばロマンがあるが、オレゴン州中部の厳しい冬を乗り切るためには、毛布にくるまってデナリと体温を分かち合う必要があった。

 そんな生活を続ける中、いよいよベンの写真が人の目に止まることになる。二つの出版社から同時に、ベンの写真をアウトドア雑誌の表紙に使いたいと連絡があったのだ。まさに人生の転機だったが、同時に大きな恐怖もあった。直腸ガンの診断を受けてしまったのだ。以降、本書はベンの凄まじい闘病生活が描かれるのだが、もちろん側にはデナリがいる。そこでデナリがどれほどベンを励まし、勇気づけたかは、ぜひ本書で確認してほしい。間違いなく言えるのは、デナリが支えてくれなければ、ベンは不屈の精神で病から復活し、ストーマ袋を付けながらもアウトドア写真家として精力的に活動を行い、作品を残すことはなかったはずだということだ。そしてその作品の多くには、自然な距離感で映り込んだデナリの姿があり、彼らの親密さをそっと伺わせるのである。

 昨今、改めて犬を題材とした作品に注目が集まる背景には、世界的なアニマルライツ=動物の権利への意識の高まりもあるだろう。社会の発展と同時に環境破壊が進んでいることから、人間を中心として考える意識そのものを改めるべきだとの主張も多い。その是非には議論の必要があるだろうが、少なくとも我々人間がなぜ古来より犬をパートナーにしてきたのか、その理由には大きな意味があるような気がしてならない。人を正しく導いてきたのは、いつだって犬たちだったのではないだろうか。


■書籍情報
『デナリ ともにガンと闘い、きみと生きた冒険の日々』
ベン・ムーン 著
定価:1760円(税込)
発売日:9月18日
出版社:辰巳出版(&books)
©TATSUMI PUBLISHING 2021.
楽天ブックス:https://books.rakuten.co.jp/rb/16814014/?l-id=search-c-item-text-01







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