【犬画像たっぷり】11月1日は“犬の日”! 『デナリ』『少年と犬』『とにかく散歩いたしましょう』……犬の尊さを伝える名著

犬の愛の深さが伝わる名著たち

 本日11月1日は、犬の鳴き声である「ワンワンワン」にちなんで「犬の日」とされている。1987年に社団法人ペットフード協会によって制定された記念日で、犬についての知識を身につけ、犬をかわいがる日だ。そこで「リアルサウンド ブック」では、映画化が決定して注目を集めている『デナリ ともにガンと闘い、きみと生きた冒険の日々』(辰巳出版/&books)をはじめとした犬にまつわる名著を、たっぷりの愛らしい犬の写真とともに紹介していきたい。【記事の最後に犬たちのフォトページあり】


 古来より人間の良きパートナーとして愛されてきた犬は、その賢さや愛情深さから、多くの作家にとっても敬愛すべき対象として描かれてきた。イギリスの作家ウィーダが1872年に書いた児童文学『フランダースの犬』、アメリカの作家エリック・ナイトが1938年のサタデー・イブニング・ポスト紙上に掲載した短編作品『名犬ラッシー 家路』、『清貧の思想』で知られる作家・中野孝次が1987年に著してベストセラーになった『ハラスのいた日々』など、犬にまつわる名著は枚挙にいとまがない。

 近年も、犬は作家たちを魅了し続け、現代的な視点を含んだ数多くの名著が生まれている。ノワール小説の名手として知られる馳星周が、一転して犬の愛の尊さを称えた『少年と犬』は、2020年に第163回直木賞を受賞するなど高い評価を得た。東日本大震災で人生を狂わせた登場人物たちが、一頭の痩せた犬「多聞」との絆を深める中で、大切なものを取り戻していく物語だ。どこまでも誠実な犬の本能は、ときに人間たちの弱さや愚かしさをも浮き彫りにする。多聞がなぜ南を目指すのか、その答えを知ったとき、我々は犬という生き物が持つ勇敢な精神に触れることができるはずだ。

 『博士の愛した数式』で知られる小川洋子が、2012年に刊行した『とにかく散歩いたしましょう』は、人気作家が日常の中で感じるちょっとした不安をユーモラスに綴ったエッセイだ。夏目漱石の『こころ』や梶井基次郎の『檸檬』といった小説を“散歩文学”と呼び、「散歩文学にはあまり威勢のいい作品は似合わないようだ」などと考えながら、愛犬ラブのマイペースな散歩に付き合う。「ひとまず心配事は脇に置いて、とにかく散歩いたしましょう。散歩が一番です」そう語りかけてくるようなラブの様子に、作者がどんな風に救われているかが伝わるはずだ。一方で、そんなラブが老犬となり、夜鳴きをするようになってしまったとき、作者はどう振る舞うのか。命と向き合うことの深淵さに唸らされる。

ベン・ムーン『デナリ ともにガンと闘い、きみと生きた冒険の日々』(辰巳出版/&books)

 犬と人の絆を描いたノンフィクションで、今もっとも注目すべき一冊は『デナリ ともにガンと闘い、きみと生きた冒険の日々』だろう。『Shi-Ba』や『コーギースタイル』といった犬専門雑誌を数多く出版している辰巳出版から刊行された書籍ということで、すでに本書を知っている愛犬家も多いかもしれない。

 写真家のベン・ムーンが亡くなってしまった愛犬デナリとともに過ごした日々を、追悼動画としてインターネットにアップしたところ、世界中の人々から数多くのリアクションがあった。注目を集めた動画は「5ポイント・フィルム・フェスティバル」でプレミア上映され、最優秀作品賞を含む2つの賞を受賞。さらに、コロラド州テルライド・マウンテン映画祭の公式動画にも選ばれるなど、ベン・ムーンとデナリは一躍ときの人となったのだ。動画は現在もVimeoなどで視聴可能で、「大切な仲間にさよならを言うのに、かんたんな方法なんてない」とのメッセージは、愛犬家たちの心を強く揺さぶり続けている。

 書籍『デナリ ともにガンと闘い、きみと生きた冒険の日々』は、動画の反響を受けて著されたノンフィクションで、ベン・ムーン自らが筆を取っている。本書がノンフィクションとして秀逸なのは、なんといっても著者の人生があまりにも波乱万丈でありながら、その筆致は同時代に生きる名も無い青年の正直な気持ちであるため、愛犬家なら誰もが自分を重ねうるところだろう。彼が人生の難問とぶつかるとき、傍らにはデナリがいて、絶望的な状況を乗り越えるための勇気を与えてくれる。そしてそれは、遠く海を隔てた国の物語であっても、世界中の愛犬家たちが共感せずにはいられないものなのだ。彼とデナリの絆を描いた物語が、国境を超えて広がっていったのは偶然ではない。

 ベンはミシガン州のグランド・バレー州立大学でスポーツ医学を学び、卒業後にメラニーと結婚、自然豊かなオレゴン州へと移り住む。サーフィンやクライミングを愛するベンは、何者でもない若き青年そのもので、これから先の人生に希望を抱いている。結婚生活に慣れると犬が欲しくなり、動物保護施設で子犬のデナリと出会う。デナリはピットブルと、おそらくはラブラドール・レトリバーのミックスで、出会ったその日からベンに懐いた。デナリという名は、アラスカの偉大な山からとって名付けた。

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