二ノ宮知子が語る、『のだめカンタービレ』と歩んだ20年 「やるからには読者の方に喜んでもらいたい」

『のだめ』二ノ宮知子インタビュー

 漫画『のだめカンタービレ』の『Kiss』(講談社)に連載が開始したのは、2001年のこと。

 ちょっぴり変わり者でありながらピアノに関しては天才的なセンスを持つ野田恵(のだめ)と、指揮者を目指す完璧主義のエリート・千秋真一が、クラシック音楽を通じて繰り広げるラブコメディ。2006年には上野樹里、玉木宏を主演に迎えて実写ドラマ化され、2007年から放送されたTVアニメも人気を博し、多くの人の青春時代を彩った名作だ。

 連載終了後もファンの熱は冷めることなく、2020年には作者の二ノ宮知子先生がTwitterにのだめたちのリモート飲み風景を描いた番外編をアップすると、たちまち10.7万件以上の「いいね」がつくなど大きな反響を見せ話題となった。そして2021年の今年、連載開始20周年を記念して新装版が毎月1冊ずつ全13巻が刊行されることに。全巻カバー&おまけページも描き下ろされるこだわりが光る。

 そこで現在も絶賛描き下ろし作業を進めている二ノ宮先生に、新装版に込めた思い、今だから話せる連載時の思い出、そしてこの20年で感じた漫画を取り巻く変化など、たっぷりと語ってもらった。さあ、楽しいインタビューの時間デス――。(佐藤結衣)

久しぶりに読み返して浮かび上がった、のだめと千秋の出会いの謎

二ノ宮知子先生の自画像

――今回の新装版刊行は、連載開始20周年記念ということはもちろんですが、ファンのみなさんの熱意が背中を押す形になったとお聞きしました。二ノ宮先生は今どのようなお気持ちですか?

二ノ宮知子(以下、二ノ宮):ずいぶん久しぶりに読み返して自分でも客観的に見られるようになってきたので、いい時期だったかなと思っています。あとは、やるからには読者の方に喜んでもらいたいので、書き下ろしをちゃんとつけようとは思いました。

――もともとは、そこまで描き下ろしの量は多くなかったそうですね。

二ノ宮:はい。漫画家なのにあまり絵が得意じゃなくて(笑)。そんなに描きたくなかったんですけど。でも、昔よりちょっとは得意になったかもしれないし、いいカラーを描いて届けたいなっていう意欲もあって。

――当時、私もお小遣いを握りしめて全巻揃えた世代なのですが、大人になってまた集めたいと思える装丁だと思いました。

二ノ宮:よかったです。今回、編集さんとデザイナーさんが本当にいろいろ頑張って考えてくれまして。これまで私の単行本は結構ツルツルの表紙だったので「もっとマットな手触りの本を出してみたい」と言って上質紙にしてもらったんです。あと1冊あたり通常版の1、2巻分+おまけページが収録されるので、できるだけ軽くなるように紙質もこだわったんですよ。

――このカバー裏の楽曲リストも「おお!」ってなりました。

二ノ宮:私も「おお!」ってなりました(笑)。そこも担当編集さんとデザイナーさんが頑張ってくれたんですよね。表紙のデザインもカバーには音符なし、本体の表紙には音符ありと違うデザインになっているんです。本を開くと、のだめのピアノが聴こえてくるみたいな感じでいいですよね。

――はい、とっても素敵です。ファンのみなさんからも感想などの反響は届いていますか?

二ノ宮:みなさんとても気を使ってくださっているのか、ネタバレしないようにうまく煽る感じにつぶやかれているんですよね(笑)。私が拝見したのは、おまけページを読んで「私の長年の疑問が解消されました」みたいな! そのままキャッチコピーにできそうなツイートをしてくださるなって思いました。

――たしかに。のだめと千秋の出会いは2年生と3年生で、タイミングとしては珍しいですよね。1年生と2年生でもなく……。

二ノ宮:実は私も久しぶりに読み返していて「ちょっとおかしいな?」と疑問に思ったので、今回おまけページとして描いたんです。「隣に住んでいたのに2年生になってから、ようやく隣の住人に気づいたのか?」って。

――なるほど。他にも読み返していて疑問に思ったところはありましたか?

二ノ宮:ときどき見つかりますね。でも、おまけページで描かなくちゃと思ったのはそのくらいかな。なので、このあと何を描こうかと迷っているところもあって。逆に「この曲について描いてよ」って課題曲とか出されたほうがいいんですよね。調べていくうちに「じゃあこんな話にしようかな」みたいに練り上げていくのが割と得意なので。なので、また音楽家の方に課題を出してもらおうかなって。大喜利みたいに。2巻のおまけページは、のだめのモデルになった“リアルのだめ“から「豚骨ラーメン」っていうお題が出たので、そこから描きました。『豚骨ラーメンカンタービレ』デス。

――(笑)。リアルのだめさんとのお付き合いは今もつづいていらっしゃるんですね。

二ノ宮:彼女は福岡でピアノの先生をしているので、最近はよくLINEでやりとりしていますね。「今度描き下ろし何にしよう」とか言うと「こういうの読みたいな」って言ってくれるんで助かるんですよ。

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