オリンピックの花形種目! 陸上選手たちが晴れ舞台に立つまでのドラマを小説で体感しよう

陸上選手たちが晴れ舞台に立つまでのドラマ

 世界のトップ選手が100メートルを9秒台半ばで走る時代になった陸上競技において、数人がようやく9秒台を出せるようになった日本でも、存分に戦える種目が400メートルリレー走だ。

 2008年の北京五輪と2016年のリオデジャネイロ五輪では銀メダルを獲得し、日本の“お家芸”にもなっている種目だけに、小説でも400メートルリレー走がテーマになった作品がいくつつも書かれている。こちらは日本独自の競技として話題になることも多い駅伝とともに、陸上小説のカテゴリーを賑わせている。

 バトンや襷をつなぐ競技には、多くの物語がついて回る。本稿では、駅伝も含めた”リレー”をテーマにした小説を紹介したい。

400メートルリレー走のチームが悩みながら結束 天沢夏月『ヨンケイ!!』

天沢夏月『ヨンケイ!!』(ポプラ社)
天沢夏月『ヨンケイ!!』(ポプラ社)

 4人で100メートルずつ走るのだから、全員が平等かというとそうではないのが400メートルリレー走。スタートして、トラックのカーブを走ってきた第一走者からバトンを受け取り、直線部分を走る二走をチームのエースが務めることが多い。

 伊豆大島の渚台高校に陸上経験者の脊尾照が転校してきたことで、3人いた陸上部の短距離メンバーと合わせて4継(ヨンケイ)こと400メートルリレー走のチームが“復活”。前に存在したチームで二走として活躍していた兄を持つ受川星哉は同じ二走を希望したが、一走に回され自分よりタイムが遅い雨夜莉推が二走に選ばれて反発する。雨夜も居心地の悪さに悩み、三走の脊尾は前の学校で受けた仕打ちを引きずり、競技に集中できないでいる。

 まとめ役の四走、朝月渡も含めて4人の陸上少年たちは、それぞれに抱えた青春の悩みを乗り越え悲願の関東大会に進めるのか? 40秒ほどの種目にドラマがぎっしりと詰まっていることを、天沢夏月『ヨンケイ!!』から感じ取ろう。そして、頂点に立つオリンピックのヨンケイ走者たちの走りを楽しもう。

女子マネージャーvs陸上男子 まはら三桃『疾風の女子マネ!』

まはら三桃『疾風の女子マネ!』(小学館)
まはら三桃『疾風の女子マネ!』(小学館)

 カッコ良いスポーツ男子に近づきたい。そんな動機から、入学した青嵐学園高校で運動部のマネージャーを志望した湯田咲良が、びゅっと目の前を横切ったイケメン男子を追いかけて着いた先が陸上部。

 「男狙いかなんかだろう」と見透かされ、だったら願い下げだと退こうとしたら先輩マネージャーに引き留められた。最初はタイムも計れなかった咲良だったが、勉強して400メートルリレー走を走る選手たちの練習メニューを考えるまでになる。そこでアドバイスを聞いてもらえず、選手じゃないからと言われて思い出した、自分がバレーボール部のエースだった中学時代の事件……。

 まはら三桃『疾風の女子マネ!』は、アスリートとマネージャーという、同じ陸上部にあって違う役割を持った人たちが、お互いを尊重し、言うべきは言い合って高みを目指すことのできる関係性になっていくために何が必要かを教えてくれる。オリンピックという晴れ舞台に立った選手たちを、そこまで支えてきた大勢のマネージャーやコーチがいたことに思いを馳せたい。

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