『キャプテン翼 ライジングサン』は予言の書か? オリンピックサッカー日本代表がたどる同じ道程
昨今の日本スポーツ選手の躍進は目をみはるものがある。かつては漫画の中でしか見られなかったような活躍はいまでは現実のものとなり、また野球界では大谷翔平のようにもはや漫画の主人公をも超えるパフォーマンスを披露する選手も現れ、現実が漫画を超えてきたという声もあちこちで聞こえてくる。
しかしサッカー界には、いまだそれを許さない、完全無欠のスーパースターが存在する。そう、『キャプテン翼』(集英社)の大空翼である。
『ライジングサン』が面白すぎる
小学生の頃から天才少年としてその名声を欲しいままにし、15歳で世界大会優勝。そして日本代表に選出されるとともに、単身ブラジルに渡る。そしてブラジルでプロデビューを果たし、U-20ワールドカップ優勝。スペインの名門FCバルセロナへ移籍。
当初は適応に苦労したもののほどなくポジションをつかみ取り、リーガのタイトル獲得に貢献。そして勢いをそのままに、マドリードオリンピックでの金メダル獲得を目標に、かつてのライバルたちと激闘を繰り広げているのが、現在、「翼マガジン」で連載されている『キャプテン翼 ライジングサン』である。
今回の『ライジングサン』はお世辞抜きでかなり面白い。昔からの翼ファンを確実に熱くさせる展開が繰り広げられていた。
無印以降、高橋陽一先生が試行錯誤しながら取り入れていった新しい要素、新キャラクターたち。それらは確かに魅力的ではあるのだが、彼らを立たせるためにかつての強敵が彼らに負け(しかもわりと惨敗)、昔から思い入れのある選手が無残にやられるという展開を見せられてしまったがために、徐々に心が離れていったファンも多かった。
だが、今回の「ライジングサン」では、これまで『キャプテン翼』が育ててきたライバルキャラクターのシュナイダーやディアス、そしていまだ本編で活躍のシーンが描かれなかったオランダのクライフォートたちの躍動する姿が存分に描かれていた。
高橋先生が生み出した、世界中で愛されているキャラクターたちを、あるべき姿(ファンが求める姿)で描いてあげるだけで、これほどまでに魅力的な作品になるのかということを改めて思い知らせてくれる。
個人的にはグループリーグ2戦目の日本対アルゼンチン。アルゼンチンの天才ファン・ディアスと若林の初対決が見られたことが嬉しかった。個の力では作中屈指の実力を持つディアス。ワールドユース編以降の不遇な扱いはケガということで無理やり片付けた高橋先生の腕力にも脱帽だが(笑)、これぞ100%のディアスというプレーをしっかりと描いてくれたことに感謝したい。