ビッグ・マムは『ワンピース』の世界で異色の存在? “二面性”を描くホールケーキアイランド編を考察
万国(トットランド)は、あらゆる立場の人間を受け入れる「羊の家」の理念を形にしたもので、彼女は今もカルメルの写真を大事に持っている。しかし、カルメルには「みなし子売り」という別の顔があり、ビッグ・マムをかわいがっていたのは、優れた力を持った兵士として政府に高額で売りつけようと目論んでいたからだ。そのことをビッグ・マムは知らない。だが、万国がお菓子の国というかわいい外観の裏側にグロテスクなものを孕んでいるのは、カルメルの本性と決して無関係ではないだろう。
「『平和』と!! 『夢の国』を!!」「おれの言う事をきけばみんな幸せに決まってる!!!」「きかないやつはわがままだから 殺さなくちゃ!!! 」と叫ぶビッグ・マムの姿は、捨てられた子供が駄々をこねているようで、おぞましくもどこか哀れに見える。
おそらく作者は、ビッグ・マムを通して「母と子」について考えようとしているのではないだろうか? 今回はサンジ奪還が目的だったため、ルフィたちとビッグ・マムの戦いは痛み分けとなったが、次のワノ国編では、百獣のカイドウとビッグ・マムが同盟を組み、四皇の二人とルフィたちが戦うことになる。
そこで尾田栄一郎がビッグ・マムにどのような結末を与えるのか? 今から楽しみである。
■書籍情報
『ONE PIECE』既刊99巻
著者:尾田栄一郎
出版社:株式会社 集英社