『ババヤガの夜』王谷晶×『 マイ・ブロークン・マリコ』平庫ワカ 特別対談:エンタメ作品で“シスターフッド”を描く意義

王谷晶×平庫ワカ 「シスターフッド」対談

今後描いていきたいのは、グラデーションのバリエーション

――先ほど、王谷さんは「老女を書きたい」とおっしゃっていましたが、そのあたりも踏まえて、今後描きたいテーマがあればお聞きしたいです。

王谷:普通に暮らしていて中高年の女性っていっぱいいるのに、もっとフィクションにもいろんなバアさんが出てきてもいいじゃんって思うんですよ。「いろんな人がいるんだよ」っていうのを常に意識したいし、「その1人の中にもマジョリティー性とかマイノリティー性とかが組み合わさっているんだよ」っていうのを書きたいですね。一面的には感じたくなくて、しんどい人の中にも、いろんなしんどさのバリエーションがある。『マイ・ブロークン・マリコ』を読んですごくいいなと思ったのが、貧乏描写に多角性があるというか、貧しさの描写にいろんなバリエーションがあるんですよね。そこに感動しました。貧乏は、さまざまに貧乏なんですよね。ああいう描写は本当に漫画ならではだし、しっかり世界を見ているなと思って。私もそういう多様なしんどさとか、その中のいろいろな喜びとか、グラデーションのバリエーションをたくさん書きたいなと思っています。

平庫:ありがとうございます。実は私、次に考えている作品が、男の子同士の学園ラブコメなんですよ(笑)。

王谷:えぇー(笑)!

平庫:ラブコメ、なのかな?? 大多数の中にうまく適合できない人たちの恋愛模様が描きたくて……というより、見たいと思っています。Netflixで学園恋愛ものを見て思ったんですけど、「この子たちは恋愛を人生の中に最初から組み込んでて、すごいなー」と。恋愛って、そんなに最初から装備されているものなのかと、私が実感がなくてわからないところでもあって。わからないからこそ、「これは恋なのでは?」という気持ちがわくグラデーションを描いてみたいと思っています。

――ありがとうございました。いろいろなお話を聞かせていただきましたが、改めておふたりの見つめているものの近さを感じることができました。いつか王谷さんが原作を、そして平庫さんが作画するという贅沢な夢も思い描いてしまいました。

王谷:あー、それいいですね! メディアミックスとか、地味な字書きの夢です。

平庫:いやそんなこと言ったら、私も新人中の新人なので。実現できるように、もうちょっと漫画がちゃんと描けるようにならないと!

王谷:私も、その日までこの業界で生き延び続けていきますね(笑)。

■書籍情報
『ババヤガの夜』
著者:王谷晶
出版社:河出書房新社
発売日:発売中
定価:1,650円
公式サイト

■書籍情報
『マイ・ブロークン・マリコ』
著者:平庫ワカ
出版社:KADOKAWA
発売日:発売中
定価:715円
公式サイト

平庫ワカ最新作はコチラ
■書籍情報
『天雷様と人間のへそ―平庫ワカ初期作品集―』
著者:平庫ワカ
出版社:KADOKAWA
発売日:3月8日
定価:715円
公式サイト

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