『深夜食堂』の鍋焼きうどん、『きのう何食べた?』の常夜鍋……冬に食べたい、グルメ漫画の"あったか鍋料理"3選

グルメ漫画の"あったか鍋料理"3選

『かしましめし』RECIPE.5 水炊き

『かしましめし』1巻

 あることをキッカケに仕事を辞めた千春、恋人とうまくいかない同性愛者の英治、バリキャリながらプライベートでは男運に恵まれないナカムラ。そんな同級生3人が、生きるために食べるご飯を描く『かしましめし』。かしまし=賑やかというタイトルの通り、3人でワイワイ食事をするシーンが印象的な作品だ。

 『かしましめし』1巻に登場する水炊きは、鶏のダシや野菜の甘味など、素材の味をしっかり楽しめる冬の定番メニュー。

 水炊きを囲みながら、婚約破棄された過去や、周囲からのアドバイスに疲れたと愚痴を吐き出すナカムラ。酒を飲みそのまま寝てしまうナカムラに、「いつものこと」と嫌な顔一つせず、鍋の〆を楽しむ千春と英治。その関係性のあたたかさも、生きるために食べるべき栄養素の一つなのかもしれない。

 たくさん悩みを吐き出した翌日は、鍋の残りのスープを使った特製おじや。野菜だしたっぷりのおじやに、お好みでミツバやチーズをトッピング。朝から友達と食べるあったかメニューは、彼氏と食べる高級フレンチより、友達と食べるおしゃれランチより、母親の作り置きご飯より沁みる。

 料理の作り方や食べ方なども詳細に描かれる『かしましめし』は、登場人物達が食事をするシーンが魅力的だ。目を閉じてしっかり食事を味わう表情、ひたすら料理を口に運ぶ所作。温かい料理で描かれる湯気や、「ハフハフ」と熱さに耐えながら食べるシーンは、見ているこちらが食欲を刺激されてしまう。

 グルメ漫画に惹かれてしまう理由は、”美味しそうな食事”ではなく、食事によって描かれる日常の何気ない一コマ、1人では乗り越え難い夜を明かす力、周囲からの愛情、そういった”ドラマ”にあるのではないだろうか。

■阿部仁美
サブカルとエンタメと珈琲を偏愛するフリーライター時々ベンチャー企業の中の人。
ツイッター:https://twitter.com/satto_n1989

■書籍情報
『深夜食堂』
著者:安倍夜郎 
出版社:小学館
試し読み:https://booklive.jp/product/index/title_id/183299/vol_no/001

『きのう何食べた?』
著者:よしながふみ
出版社:講談社
試し読み:https://ebookjapan.yahoo.co.jp/books/320812/A001546244/

『かしましめし』
著者:おかざき真里
出版社:祥伝社
試し読み:https://www.cmoa.jp/title/136034/

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