『半沢直樹』『Another』時を経て描かれた続編が上位にランクイン 文芸書ランキング

『半沢直樹』『Another』続編がランクイン
綾辻行人『Another 2001』

 ミステリーとホラーの卓越した融合を見せた綾辻行人氏『Another』。こちらも7年という時を経て刊行された続編『Another 2001』が6位にランクイン。第1作目は、山崎賢人・橋本愛主演での映画化をはじめさまざまにメディアミックス展開され、海外でも高評価を受けたが、本作もその勢いに負けてはいない。800ページ以上の大作ながら、発売直後から書店では売り切れ続出。10月12日には公式ツイッターで大重版が告げられた。

 前作を読まずとも十二分に楽しめる仕掛けが満載の同作だが、前提を軽くおさらいをしておこう。夜見山北中学校の3年3組には、毎年、とある申し送りがされていた。始業式の日、座席がひとつ足りなければそれは〈ある年〉。死者がクラスにまぎれこみ、〈対策〉をとらなければ〈災厄〉が起こり、クラスメートとその関係者たちが次々と死を遂げていくというのだ。誰が死者かはわからない。記憶も記録も、知らず改竄され、誰も気づくことができないという不可思議な現象。そう――この〈災厄〉は呪いではなく、現象なのだ。誰かの恨みや憎しみに端を発しているわけではないから、対策をとるくらいしかできない。そして失敗すれば、死ぬ。

 実に理不尽だが、ある程度決められたルールにのっとり、生徒たちは抜け穴をくぐるようにして生き延びようとする。そのひとつが、死者のかわりに、誰かひとりを〈いない者〉としてしまうこと。クラス内では徹底的に無視して、存在を消し、一人増えたという事実をなかったことにしてしまうのだ。

 第1作目の『Another』で、いない者となったのは眼帯の美少女・見崎鳴だった。そして本作では、番外編にあたる『AnotherS』で鳴と出会い、ある事件に遭遇した3歳下の少年・想が主人公。鳴の助言をうけながら、2001年の3年3組に発生した〈現象〉に立ち向かう……。

 叙述トリックをはじめ、本格ミステリを代表する作家としてあらゆる驚きとどんでん返しを駆使し、読者を魅了した1作目。同じ設定で、今度はいかにして読者を欺くのか? 史上最凶の災厄、という煽りコピーに期待は募るが、驚くべきことになんと、同作では物語の序盤で死者が誰かが明かされてしまう。えっ、それでどうこのあとの物語を展開させるの……? と思うかもしれないが、この年初の試みとなる、ある対策が、現象を奇妙にゆがめていく。800ページ、ノンストップで読み切ってしまうこと間違いなし。待った甲斐ありの新作に隠された真実を、ぜひ自身で確かめてみてほしい。

■立花もも
1984年、愛知県生まれ。ライター。ダ・ヴィンチ編集部勤務を経て、フリーランスに。文芸・エンタメを中心に執筆。橘もも名義で小説執筆も行い、現在「リアルサウンドブック」にて『婚活迷子、お助けします。』連載中。

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