「ようこそ実力至上主義の教室へ」シリーズ躍進に注目 ラノベ週間ランキング

ラノベ「よう実」シリーズ躍進に注目

本 ライトノベル 週間ランキング(2020年8月10日~2020年8月16日・Rakutenブックス調べ)
1位『魔法科高校の劣等生(32) サクリファイス編/卒業編(電撃文庫)』佐島勤、石田可奈 KADOKAWA
2位『わたしの幸せな結婚 四(4)(富士見L文庫)』顎木あくみ、月岡月穂 KADOKAWA
3位『【楽天ブックス限定特典付き】誰かこの状況を説明してください! 〜契約から始まるウェディング〜 4(アリアンローズコミックス)』木野咲カズラ、徒然花 フロンティアワークス
4位『ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~(2)(メディアワークス文庫)』三上延 KADOKAWA
5位『わたしの幸せな結婚 二(2)(富士見L文庫)』顎木あくみ、月岡月穂 KADOKAWA
6位『アクセル・ワールド25 -終焉の巨神ー(電撃文庫)』川原礫、HIMA KADOKAWA
7位『わたしの幸せな結婚 三(3)(富士見L文庫)』顎木あくみ、月岡月穂 KADOKAWA
8位『わたしの幸せな結婚(富士見L文庫)』顎木あくみ、月岡月穂 KADOKAWA
9位『はたらく魔王さま!21(電撃文庫)』和ヶ原聡司、029 KADOKAWA
10位『りゅうおうのおしごと!13(GA文庫)』白鳥士郎、しらび SBクリエイティブ
ランキング:https://books.rakuten.co.jp/ranking/weekly/001017/#!/

魔法科高校の劣等生32
『魔法科高校の劣等生(32)サクリファイス編/卒業編』(電撃文庫)

 Rakutenブックスのライトノベル週間ランキング(8月10日~17日)で1位となったのは、累計発行部数が1500万部を超えた「魔法科高校の劣等生」シリーズの最新刊で、完結編となる『魔法科高校の劣等生(32)サクリファイス編/卒業編』(電撃文庫)。一人で戦略級の魔法を繰り出す司波達也を相手に、異形の力を手に入れた九島光宜が東富士演習場で激突するクライマックスに心躍らせて、9月10日の発売を待っているファンの多さがここから分かる。

 完結編だからといって即幕引きにはならず、達也たちが魔法科高校を卒業してからの活動を描く『続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー』が10月10日に発売。達也たちが抜けた後の魔法科高校が舞台となった『新・魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち(仮)』も書籍化が決まった。放送が延期となっていたテレビアニメの第2期『魔法科高校の劣等生 来訪者編』も10月から始まる。こうしたマルチな展開は、圧倒的な強さで敵をねじ伏せる“俺TUEEE”キャラの代表・司波達也の凄さに近づくきっかけになりそうだ。

 “俺TUEEE”といえば、発揮すれば周囲のすべてを圧倒する知性や身体能力を持ちながら、隠したままで周囲を巧みに動かし、競争をサバイバルしていく少年が主人公という、変わった設定のライトノベルがある。衣笠彰梧の作で、トモセシュンサクがイラストを描く「ようこそ実力至上主義の教室へ」シリーズだ。週間では30位までに入っていないが、8月16日の日別では30位までに既刊のうち7冊が並ぶ人気ぶりを見せた。

 卒業時には希望する進学や就職が100%かなう名門校、高度育成高等学校に入学した綾小路清隆を主人公にしたシリーズ。1年Dクラスに配属された清隆たちに担任から、月初めに10万円相当のポイントが支給されたと告げられ、さすがは名門校と喜んだのもつかの間、1か月が経ってその間の生徒たちの浮かれた素行がチェックされ、5月の支給額はゼロだと告げられたことから、学校ではすべてが実力によって決定されていると判明する。

 試験などで好成績をとればポイントは取り戻せるが、実はDクラスは学業に限らずコミュニケーション能力が不足していたり、暴力性を持っていたりとどこか足りない生徒たちが集められた最底辺のクラス。成り上がっていくのは不可能と思われた。だが、成績優秀ながら思いやりに欠ける点があってDクラスに配属された堀北鈴音は、競争に勝ってAクラスに上がろうと必死になる。その鈴音に清隆が協力する。

 無気力な雰囲気を漂わせ、成績も運動も平均以下の目立たない清隆だったが、実はある施設で英才教育を受け、最高傑作とまで言われたスーパーエリートで、思うところがあって施設から逃げ出す形で高度育成高に進んだとき、わざと成績を抑えていた。そのままひっそり生き続けようにも、学校は激しい競争を強いてくる。清隆は、赤点をとった者が退学となる試験を乗り切るための策をめぐらせ、無人島でのサバイバルでも他のクラスが仕掛けてきた策を見抜くなどしてDクラスを支える。

 ルールの隙間を読んで絶体絶命のピンチを打破し、巧みな交渉によって協力者を増やし、敵の裏をかくような策を繰り出して勝利をつかむ清隆の知略が圧巻。それでいてトップには立たず、手柄を鈴音や櫛田桔梗といった同級生たちに回して裏方に徹する姿には、数多ある“俺TUEEE”のヒーローとは違った格好良さがある。同時に、清隆が単に親切で周囲を持ち上げているのではなく、自分のためだという不穏さもあって、司波達也のようには讃えづらい。

 籠絡でも買収でも脅迫でも、法や規律に触れなければ何でもありの競争を、高校生たちが繰り広げている様にも、なかなか不気味なものがある。ただ、社会というものを見たときに、才能だけでは乗り越えてはいけず、知力でも体力でも機転思考力でもコミュ力でも、様々な力が必要とされる。そうした力を得るにはどうすれば良いかをシミュレーションしてくれるシリーズとして、若い世代の支持を集めているのかもしれない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ランキング」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる