「ようこそ実力至上主義の教室へ」シリーズ躍進に注目 ラノベ週間ランキング
その後も、様々な特別試験をこなし、誰かを投票によって退学に追い込むという残酷な試験も経て生き残った清隆とDクラスが、2年に進級してからを描いた2年生編が今年1月にスタート。最新刊『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編2』では、1年生とペアを組んでの特別試験の数学で、清隆だけが満点をとったことで、彼の本性を知らない生徒たちの間に動揺が走る。
Aクラスでトップの女子も解けなかった問題を、過去に1度も試験で満点を取っていなかった清隆が解けるはずがない。本当の学力を隠していたのではないか。誰もが良い点を取って上位進出を目指しているクラスを裏切っていたのか。信頼が揺らぎ糾弾が始まる。才能を隠していたことが裏目に出た。
だからといって、理由を明かす訳にはいかない清隆を脇に、鈴音が勝手に清隆が才能を隠していた訳を並べたて、周囲を納得させてしまう。清隆がそうするなら何か理由があるはずだ。バレる訳にはいかないのなら、別の理由を作ることで清隆が活動しやすくなる。それでAクラスに上がれるなら協力する。鈴音の判断力が光る場面だが、彼女がそう言い訳せざるを得ない状態に追い込んだのも清隆の計算だとしたら、なおのこと不気味な才能だ。
『2年生編2』では、1年生編でDクラスが経験した孤島サバイバルが、全学年を巻き込んで実施されることが決まり、次巻から知力と体力を削るような壮絶なバトルが始まりそう。清隆を是が非でも退学させたい勢力が暗躍し、送り込まれた“刺客”も牙を剥く。清隆の本領がすべて明かされるのか。1位になれば以後、勝手に振る舞えるようにしろと要求するクラスメートの高円寺も、これまで明らかにしてこなかった本領を見せるのか。刊行が待ち遠しい。
ランキングの2位は9月15日発売の顎木あくみ『わたしの幸せな結婚 四』(富士見L文庫)。継母や義母妹に虐げられ、婚約者候補をすべて追い出してきた冷酷無比な軍人・清霞に嫁ぐよう命じられた薄幸の女性・美世が、実は実直だった清霞と心を通わせるようになっていくシンデレラストーリーの最新刊。清霞と仲良さげな女性軍人・薫子の登場で何が起こる?
■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。