『ぼくの地球を守って』が時代を超えて読み継がれる理由 何度読んでも面白い、緻密な物語を考察

『ぼくの地球を守って』の物語構造

 こんなふうに、この物語は入れ子構造のように、一つの謎が解明されるとまた新たな謎が出現する。「答えが知りたい」という欲求への刺激と、謎が解明された時の快感のバランスが絶妙なのだ。月基地転生組は亜梨子を含む6人が同い年なのに、なぜか「輪だけが年下」である理由がわかるシーンなど、その最たる例と言っていいだろう。読者は徐々にミクロな謎へと誘われ、それを夢中になって追いかけていくうち、この難解な物語の核心へと近づいていくことになる。

 作品のタイトルにしても同様のことが言えるかもしれない。日本語としては単純な言葉だけれど、「僕」は誰なのか? 何から「地球を守る」のか? と考えれ始めればとにかく意味深だ。けれど最後まで読み終えた時、この物語にこれ以上のタイトルはないと感じるのではないだろうか。

 その上でもう一度頭から読み返してみれば、この緻密な物語はきっと、また新たな「謎」に出会わせてくれるだろう。『ぼくの地球を守って』は、そんなふうに何度でも、読むたびに新たな発見を与えてくれるのだ。

■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ Twitter(@erio0129

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