戸田真琴が語る、“明るい諦め”の先にある希望 「愛に対する幻想に囚われなくて良い」

戸田真琴が語る、“明るい諦め”の先にある希望 「愛に対する幻想に囚われなくて良い」

 『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』というエッセイがある。真っ赤な表紙に白文字で綴られたタイトル。隣には、著者名の“戸田真琴“が並ぶ。その名前が持つ印象は人によって異なりそうだ。

 出演作品で処女喪失したAV女優、自分の言葉を臆さずに発信する文筆家、そして消えてしまいそうな言葉たちを映画という形にする監督……。「1000人ぐらいに分裂したいな」という書き出しの通り、彼女は彼女の命の限り様々な形で創作を続けている。

 戸田真琴は言う「このタイトルにピンとくるあなたのために書いた本です」。なぜ、戸田真琴は叫び続けるのか。本書が生まれた背景から、彼女が願う未来について聞いた。(佐藤結衣)

信用している人に内緒話をするような本に

戸田真琴『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』(角川書店)

――昨年12月に発売した『あなたの孤独は美しい』に続く、2作目となるエッセイ本。本作が生まれた背景を改めて聞かせてください。

戸田真琴(以下、戸田):もともとnoteに日記のような形で、日々感じたことを書いていたのですが、それを見てくださった編集の方から「本を作りましょう」と声をかけていただいたのがきっかけです。前作は、「これから先、1人で生きていくのだとしたらどうしょう」と考えている人たち、どちらかというともともとファンでいてくれている男性の皆さんに向けて綴っているイメージでした。1文1文を短くして、誰もが文章として読みやすいように意識して。それに対して、本作は悩める女性たちにも手にとっていただきたいなと思って書きました。文章も前作とは違って、あるがままにというか、整えていないからこそ伝わるモノを大切にしたくて。私の考える流れと、読んでくださった方の思うところが、少しでも触れ合えたらいいなと思いました。

――様々なメディアで文章を書かれていますが、Webと書籍とでは表現に違いはありますか?

戸田:やはり無料でどこからでも見られるものと、自分の意志でお金を出して見ようと思ってもらえたものとでは、読んでくださる方の文への向き合い方が変わりますよね。簡単に見られるものは、どんな人に読まれるのかがわからないので、やはり慎重になります。その点、タイトルなり装丁なり、本や私に対して興味を持ってくれた人が読んでくれるというのがわかっていると、信頼できるというか、信用している人に内緒話をするような感覚で、言葉を綴れる気がします。私は小さいころから日記をよく書いていて、自分に対して自分に話しかけるような機会が多かったのだと思います。この本は、それに限りなく近い感覚で、私の個人的なところを受け取ってもらえる場所だと思っています。

――マットな深い赤が印象的な美しい装丁ですが、こちらにも戸田さんのこだわりが?

戸田:すごくキレイですよね。とても気に入っています。1冊目は私の写真が表紙になっていて、“AV女優の戸田真琴が書いた本“というイメージが強くなっていますが、今回は女性にも手にとってもらいたいという思いから、写真はなくしました。タイトルや装丁に惹かれて手にとったら“戸田真琴の本だった“という感じになったらいいなと。「真っ赤にしましょう」と提案してくださったのは、デザイナーの佐藤さんです。第1章での、AV業界で性が消費されていく世界観に、赤がカッコよくハマるんじゃないかと。他にも編集部の女性社員のみなさんのアイデアもお聞きしながら作りました……今、気づいたんですけど、この表紙のマットな感じは、私の小学生のときのランドセルにそっくりですね(笑)。みんなが「ピカピカつやつやのランドセルがいい」って言っていたなかで、私は「やだ、こっちがいい」ってマットな質感のランドセルを選んだんです。無意識ですけど、私の潜在的な部分も宿ってるのかも。

――なんと、そんな偶然が! このインパクトのあるタイトルは、どのようにつけられたのでしょうか?

戸田:最後に決めました。全部の原稿を読み返しながら、どういうことを思っている人に読んでほしいのかを考えて。このタイトルについては、あとがきにも明確なアンサーを書かせていただきました。このタイトルにピンとくる人は、きっと愛に対する幻想というか、同調圧力のようなものに囚われているんじゃないかと思ったんです。「みんなと同じように恋愛しないと」「誰かを好きにならないと」とか思うけれど、本質的には愛ってそういうものじゃないはずです。でも、みんなどこかでその圧力を感じて、怯えているなと思っていて。それに気づいてしまうことは、絶望じゃなくてどちらかというと希望なのだという意味で、「たいしたことじゃない」と言っているんです。そういう“明るい諦め“みたいなところを伝えたかったんです。

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