『名探偵コナン』緋色の捜査官“赤井秀一”が抱える大きな秘密ーー心に秘めた情熱と圧倒的な実力を考察
『名探偵コナン』の重要キャラクターであり、劇場版『緋色の弾丸』にも登場するFBI捜査官・赤井秀一。今でこそ主人公のコナンの頼もしい味方である赤井だが、初登場時は黒ずくめの組織の"匂い"をまとう怪しい存在として描かれていた。初登場エピソードが収録されたコミックス29巻の発売からおよそ20年、その月日の中で織り込まれた描写から、彼の魅力を分析していこう。
"銀の弾丸"として恐れられる実力
赤井秀一は切れ者のFBI捜査官だ。優れた頭脳と大胆な行動力で、黒ずくめの組織や公安との読み合いを制している。『名探偵コナン』という作品には、有能な探偵や捜査官が多く登場するが、その中でも赤井は特別だと言えるだろう。なにせ、黒ずくめの組織のボスが、"銀の弾丸"(シルバーブレット)と呼んで警戒しているほどの存在なのだ。
彼は、腕利きの狙撃手(スナイパー)でもある。後方に陣取って静かに時を待ち、たった一発の銃弾で、仲間の危機を救う。その腕前は、700ヤードの距離からの超精密射撃を可能とするほどだ。赤井の射撃術は様々なエピソードで楽しめるが、特に劇場版『異次元の狙撃手』を観て"狙撃手"について知っておくと、彼の"異次元"な能力をより味わうことが出来る。さらに、赤井は截拳道という武術にも長けており、接近戦でも圧倒的な強さを誇る。傍に居ても遠く離れていても、頼りになる男なのだ。
その身に背負う大きな秘密
初登場時は怪しさ満点で、その素性や目的が謎めいていた赤井。実はFBI捜査官で、かつて黒ずくめの組織に潜入していた……という彼の正体は明かされた。しかし、赤井は物語の中で新たな秘密を抱えることとなる。その秘密とは、自分の生存。「赤井秀一」は死に、別人として潜伏することになった。
赤井の死の偽装計画は、CIA諜報員として潜入捜査の任につくキール(水無玲奈)を、組織に深く入り込ませるために立案された。「組織の命令に従ってFBI捜査官を殺した」という事実によって、キールは組織から強く信頼されることとなる。赤井の生存が明かされ、この事実が反転すれば、キールが裏切り者であると疑われてしまいかねない。つまり、黒ずくめの組織を倒すためには、赤井が生きていること、そして赤井=沖矢という事実は、絶対に明かされてはならない秘密なのである。
赤井は現在、大学院生「沖矢昴」という仮の身分で潜伏している。その身に大きな秘密を抱えながら、組織を追い続ける——奇しくも主人公・江戸川コナンと重なるその生き様には、胸が高まってしまう。
胸の奥に秘められし情熱
常に冷静で、大人の余裕とも言える態度を崩さない赤井。しかし、彼の心の中にも熱く燃える想いがある。10年前に幼い新一とビーチで出会った時、そこで事件を推理している赤井の様子は、現在と比べるとだいぶ子供っぽい印象を受ける。なんと、母親とケンカをするほどやんちゃな一幕もあったようだ(MI6捜査官の母と、FBIを志す息子のケンカが、やんちゃと呼べるかはさておき)。
そんな彼は、消えた父の死の真相を探るため、アメリカ国籍を取得してFBI捜査官を志していることを家族に明かす。"好奇心という名の熱病に冒されている"と自らを称する姿は、やはり少年のような不敵さがある。
また、先日『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ)で放送された劇場版『純黒の悪夢』でも、この一面が顔を覗かせた。組織を追う中、赤井は観覧車の頂上で公安警察官の安室透と対峙する。所属する組織は異なるが、どちらも黒ずくめの組織を追う正義を持っていて、直接の敵ではないはずの二人。口元に不敵な笑みが浮かんだのは、相手を挑発するためか、好敵手の存在に心が躍るためか……。