『約ネバ』と『カイジ』の共通点とは? 『約束のネバーランド』18巻に見る、ゼロサムゲームの世界観

『約ネバ』と『カイジ』の共通点とは?

 週刊少年ジャンプで連載されている白井カイウ(原作)、出水ぽすか(作画)の漫画『約束のネバーランド』(集英社、以下『約ネバ』)は、孤児院で育てられたエマをはじめとする子どもたちが、世界の秘密に気づき、生き伸びるために戦う姿を描いたダークファンタジーだ。

※以下、ネタバレあり。

 最新刊となる第18巻では、人間と鬼たちの戦いがひとつの決着を向かえた。

 人間農園・ラムダ7214の子どもたちと戦うノーマンは、鬼たちを束ねる女王と五摂家と呼ばれる貴族を滅ぶすため、元貴族のギーラン家と盟約を結び、義祭のために鬼たちが集まる王都で同士討ちを目論む。

 ノーマンの計画が成功すれば、罪のない鬼たちまで犠牲になると思ったエマは、レイと共に「七つの壁」と呼ばれる場所に住む神(のような存在)の元に向かい、鬼と人間の間にある契約を結び直す。

 一方、エマの仲間・ギルタとドンは(鬼が人間を食べなくても退化しない)「邪血」の力を持った鬼・ムジカとソンジュを見つけ出し、共に王都を目指す。ムジカとソンジュはノーマンの計略で強制的に退化させる毒薬をもられた鬼たちを救うために中央広場へと向かい、エマとレイは女王と五摂家の集う城へと向かう。しかしすでにギーラン家と五摂家は同士討ちとなっており、生き残った鬼の女王・イヴェルクも含め、ノーマンたちラムダ7214の戦士たちによって皆殺しにされていた。

 このまま世界中の鬼を滅ぼそうとするノーマンに対し「もう戦わなくていいんだよ」と言うエマ。冷静に振る舞うノーマンに対し、エマは「怖くて震えてる小さな子供に見える」と言う。今までカリスマとして振る舞っていたノーマンだったが、心の奥底では自分のやっていることの罪悪感に絶えられず、怯えていたのだ。

 実験体にされたノーマンたちは長く生きられない身体となっており、そのこともあって計画を断行したのだが、同じラムダ出身のアダムの身体に治療のための抗体があるとエマは語り、ムジカとソンジュが王都での被害を抑えていることを伝える。

 話を聞いたノーマンは計画を止めて和平の道を探ろうとするが、そこに鬼の女王・イヴェルクが復活する。

 細胞が暴走し手当り次第に周囲のものを食い尽くそうと肥大するイヴェルク。切り離した皮膚が、今まで食べた人間や鬼の姿へと変わっていく姿は見るもおぞましく、不気味なものを繊細で美しいタッチで描く出水ぽすかの絵が最高潮に際立っている。

 このイヴェルク女王は『約ネバ』の世界をもっとも象徴する存在だろう。

 エマたちが鬼の食用児として犠牲になることで、鬼と人間の世界の調和が保たれているという設定を筆頭に「生き延びるためには誰かを犠牲にしなければならないのか?」というのが『約ネバ』の根幹にある世界観だ。

 これはエマとノーマンたち子どもたちの社会も、鬼たちの社会も同様で、人間の敵味方、鬼の敵味方、2つの世界の内部抗争が交差するという実に複雑な構造となっているのが、この王都編である。

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