14歳でデビューした漫画家・ときわ藍、デビューの裏側に母娘の『まんが道』アリ 生まれ変わった『ドラえもん』を読む
“少年の成長”を描けるのは少年漫画だけじゃない
さて、文字数の関係で物語について詳しく触れることはできないが、本作は、のび太が「タイムふろしき」を使って、かわいいふたごの恐竜の赤ちゃん、キューとミューを現代に甦らせるところから始まる。何をやってもダメな頼りないキューと、元気でなんでもすぐにおぼえる優等生のミュー。のび太はそんな2匹を分け隔てなく愛するが、やはり自分に似たキューのことが心配でならない様子。やがてのび太とドラえもんは、日に日に大きな体に育っていく2匹を白亜紀に帰さねばならないと考えるようになるが、そこにいたるまでの、のび太とキューの“成長”の物語に多くの読者はきっと胸を打たれることだろう。そう、のび太はダメな恐竜の赤ちゃんを育てながら、ダメな自分とも向き合い、少しだけ大人になるのだ。
誤解を恐れずにいわせていただけば、これまで“少年の成長”を描けるのは少年漫画しかないと思っていた。だが、少女漫画でもここまでやれるのかと、本作を読んで感心した。ときわ藍は本物だ。彼女の“夢のポッケ”から次に何が飛び出してくるのか、いまから楽しみで仕方がない。
※文中にある『映画ドラえもん のび太の新恐竜』の冒頭2ページの作画は、藤子・F・不二雄のチーフアシスタントだった、むぎわらしんたろうによるもの(筆者付記)
■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。@kazzshi69
■書籍情報
『夢のポッケ -14歳で夢をかなえてまんが家になった私-』
ときわ藍 著
価格:本体682円+税
出版社:小学館
公式サイト
『映画ドラえもん のび太の新恐竜〜ふたごのキューとミュー〜』
原作:藤子・F・不二雄 藤子プロ
脚本:川村元気
まんが:ときわ 藍
価格;本体650円+税
出版社:小学館
公式サイト