ジェーン・スーが語る、“未婚のプロ”の生き方 「大人になって、意図的に“悪さ”をするようになった(笑)」

ジェーン・スーが語る、“未婚のプロ”の生き方 「大人になって、意図的に“悪さ”をするようになった(笑)」

真面目にやろうよと言うとき、人は人を断罪しがち

――本書を読んで、スーさんは常に思考のバランスを取ろうとしている印象を受けました。例えば、マイリー・サイラスがこれまでのイメージと正反対の過激なパフォーマンスを行ったことに当初は「反抗期が来た」と感じたものの、そのことを思い直し「無自覚に、私もマイリーに手前勝手な理想像を押し付けていたのだ」と書いています。普段から、物事を多面的に捉える意識をしていますか?

スー:真面目に生きようとすると、いつの間にか過去の常識にとらわれる傾向があるので気をつけてはいます。新しくラジカルなものを肯定しようとすればするほど、過去の自分のやり方にとらわれてしまうとか。マイリーを肯定したいと思えば思うほど、眉をひそめてしまったのはそういうこと。多くの賛同を得られない人に対し「応援するよ、一生懸命、真面目にやれば大丈夫だよ」と言うとき、私は過去のものさしで人を断罪しがちなんです。そうならないように意識しています。

――エッセイでは、「エンターテインメントは生きる糧になる」ということもたびたび書いています。20代前半で両親がいっぺんに倒れてしまったとき、ラッパー・Nasによる楽曲「The World Is Yours」の「この世界はお前のもんだ」というリリックに支えられたり。エンターテインメントの力について改めて聞かせてください。

スー:ライブでも音源でも、小説でもエッセイでもそうなんですけれど、生きる上で必須ではないもの――例えば非日常的な外食などもそうですが、そういうものほど、その人の命を前へ進めるのに役に立つことがあるなと思うんです。年齢を重ねるごとにそれを強く認識していますね。かわり映えのしない毎日に彩りを添えてくれる、人を楽しませるエンタメの力はやはり大きい。

 衣食住があれば命は途切れないけど、それが文化的な生活かというと違いますよね。栄養と睡眠と、襲われたりしない寝る場所があれば、命は明日に続いていくけど、前に進む意思を持って生きるにはエンターテインメントの力が必要だと思います。エンタメに対する熱意がある人の方が、明らかに人生が楽しそうだもん。最近はオタク的な気質を隠さなくてもよくなって、熱意を全開にしても社会から異質な目で見られなくなったのは、素晴らしいことだと感じています。

レコード会社の仕事は楽しかったけど会社には怒っていた

――スーさんは文筆業、ラジオパーソナリティなど多方面で活躍していますが、どうやって今の働き方に至ったのか気になります。新卒でレコード会社に入社したとのことですが、そこではどんな仕事を?

スー:レコード会社の販売促進部という宣伝部署に入りました。ラジオやテレビや雑誌に新譜を持って行って「こういうアーティストを取り上げてください」と宣伝する仕事です。そもそも音楽が好きで、その人のいいところを見つけて売り込むのが得意だったので、楽しかったですね。忙しくて学生時代の友達とは働く時間が変わって会えなくなってしまったりはしたけれど、仕事と遊びの境界線がないような仕事だったので、そこは苦ではありませんでした。

 でも、会社というシステムに対しては、いつもイライラして怒ってました。今考えるとバカだなと思うけれど、それは私が会社というシステムを理解していなかっただけで。

――どんなことに怒っていたんですか?

スー:例えば、努力を認めてくれないとか、少数の男性の意見で物事が決まっていくとか、センスの悪い人が決裁権を持っているとか、無責任な人がなぜかのほほんと会社にいつづけられるとか。でも、今考えてみれば学校じゃないのだから、努力が認められないのは当然のことで、結果だけが評価される場所ですからね。主に男性の意思で会社が回っていくことに関しては、いいか悪いかは別として、多くの男性にとっては60歳まで働き続ける場所なのだから、どんなに出来ない奴がいても、お互いに刺し違えるような真似は簡単にはできない。自分が逆の立場になったら危ないので、お互いに守り合おうとするわけで、私にはそういう政治が見えていなかった。頑張った分だけ評価してもらえると思っていたなんて、本当に甘かった。

――新卒から31歳までレコード会社にいたと本書に書いてありましたが、その後は?

スー:レコード会社は2社で働いて、そのあとは半年間何もしないで家でずっと寝ていたのですけれど、そろそろ働こうと考えたときに、自分が今までやってきたことが他の業界でも活かせるのかが気になって。内資のアイウェアブランドに入って、ブランディングディレクションをやっていました。商品の企画から参加して、店頭にどう流して露出させて、いかにしてブランドを魅力的に見せていくかをディレクションする仕事です。

――アイウェアブランドを選んだ理由は何だったのですか?

スー:アイウェアを選んだと言うより、ベンチャーだったからというのが理由です。レコード会社は大きい企業だったから、自分の部署のことしかわからないんです。でも、どうやってプロダクトが作られて流れて行き、消費者のもとに届くのか、川上から川下まで全体像を見てみたかったので、SPA(製造小売業)を選びました。

 すごくやりがいがあったし、それまで自分が流していた情報を受け取る側のマインドを、全然理解していなかったことにも気づきました。今までテレビにしろ、ラジオにしろ、ミュージシャンにしろ、情報を発信する側の人しか仕事仲間がいなかったんです。でも、情報を受け取る側の人々と接することで、「人々の話題はこういう風に作られるんだ」とか、「あんなやり方じゃ届くわけなかったな」とか、そういうことがわかるようになりました。一方、音楽業界という特殊な業界で培った知識や経験が、ちゃんと応用して使えたのは自信になりました。

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