新型コロナで学習参考書の売上急増へ……出版業界が楽観視できない理由とは?
政府は2月27日に行われた新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校を要請した。実際に休校にするか否かは学校や自治体の判断に委ねられたこともあり、教育現場はもちろん各家庭にも混乱が広がった。その余波で、書店や出版取次、出版社にもある変化が起こっている。突然の長期春休みとなったことで、児童たちが自宅学習に使用する学習参考書の売り上げが増加しているというのだ。学習参考書・辞典などを専門に扱う出版取次、株式会社博文社の成田健一氏に話を訊いた。
「先生たちが宿題も渡せず、春休み中に何をしなさいという指導もできないままいきなり学校が休みになってしまった。単月の計算ではありませんが、参考書の売り上げは前年度比200%を超えているお店が結構あります。そこまでじゃなくとも、120%、130%の伸び率がザラです。32年間この仕事をしていますが、こんなことは初めてで、特需と言える状況です。まとめ買いが多いので、先週は売り切れて商品がないという書店が多かった。あまりに突然のことだったので、私たちも書店も用意する間がなかったんです。今週に入ってある程度商品が書店に並び始めていますが、先週参考書を手に入れられなかった子だけでなく、手に入れていた子たちも1冊やり終えてしまって追加で買っているという状態です」
まとめ買いや追加購入が多い理由を成田氏は次のように指摘する。
「地域によって違うのですが、全校休校ではなく、親御さんが仕事を休めない子たちのために9時から13時まで教室を解放しているところもあります。その教室で自習をさせるために、子どもたちに問題集や参考書を持参させているんです。それも複数冊持ってこいという話になっている。1日4時間もドリルを集中してやると、2~3日で終わってしまいます。だから1人1冊では足りないんですよ。一方、厚物と呼ばれる分厚い参考書や、レベルの高い難しい問題集は全然売れていません。学校に厚くて重いものを持って行くのは大変ですし、あくまで自習なので誰もわからないところを教えてくれないからです」
物理的にも心理的にも「手軽」さが売りのドリルに人気が集中しているのだと成田氏。時期もちょうど学期末の終わりということも手伝って、とりわけ“総まとめ”、“総復習”という惹句のあるものの動きが好調だという。
出版社も取次も、もちろん書店も予想していなかった思わぬ特需となり、商品をかき集めるのに苦労したというが、今後の動きはどのような予想をしているのだろうか。