『岸辺露伴は動かない 懺悔室』は大ヒット確実? 漫画編集者が語る、見どころと実写化シリーズの秀逸さ

漫画編集者が語る実写映画『岸辺露伴』の見所

 『岸辺露伴』シリーズの実写映画第二弾『岸辺露伴は動かない 懺悔室』が5月23日、公開されることが決定した。荒木飛呂彦原作による同シリーズは、人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフで、本編第四部に登場する漫画家・岸辺露伴を主人公とするもの。NHKドラマ『岸辺露伴は動かない』、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』とも好評で、新作が待望されていた。

映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』超特報【5.23(金)公開】

 荒木飛呂彦に詳しい漫画編集者で評論家の島田一志氏は、原作『懺悔室』について「1997年の短編だが、今読んでも古びていない面白さがある」という。

 「『懺悔室』は『岸辺露伴は動かない』シリーズの一作目にあたります。漫画の取材でイタリアを訪れた露伴が、教会の懺悔室に潜り込み、神父側の部屋である男の懺悔を聞く。それはとんでもない怪異の物語で、どんでん返しもあり、ホラー作品としても秀逸な内容です。『ジョジョ』本編では、同様に特殊能力を持つ“スタンド使い”と戦うわけですが、このシリーズでは敵が土着の神や妖怪、自然現象だったりして、露伴はそれを持ち前の機転で切り抜けていく。その面白さが一作目によく出ており、露伴自身のバトルはなく、ひたすら聴き手にまわり、人の心を読むスタンド『ヘブンス・ドアー』の能力すら使いません。映像作品から入ったファンにとっては、『岸辺露伴は動かない』というタイトルの意味がここで回収されるかもしれません」

 原作は49ページの短編であり、島田氏は「これが映画一本分になるのか」という疑問を持ちつつ、前作の仕上がりから期待を寄せているという。

 「前作『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では、原作ではほとんど描かれていなかった絵師の過去を掘り下げており、オリジナルのエピソードが加わる可能性が高いと思います。あるいは、『ジョジョ』本編や『岸辺露伴』シリーズから他のエピソードを加えるのか、いずれにしても楽しみで、注目したいポイントですね」

 『岸辺露伴』シリーズは、そもそも『ジョジョの奇妙な冒険』から派生したマイナーポエット的な作品であり、「普通に考えれば、何度もドラマ化されたり、映画化されたりするようなコンテンツではない」と島田氏。人気の秘密はどこにあるのか。

「これは脚本を手がける小林靖子さんの手腕によるところが大きいと思いますが、“省略と補足”が絶妙です。小林さんは『ジョジョの奇妙な冒険』のアニメシリーズでも脚本を担当していて、原作を深く理解した上で、まずは老若男女の目に触れるNHKでのドラマ化にフォーカスして、非常にわかりやすくアレンジしています。例えば、『岸辺露伴』シリーズを映像化するなら、少年の姿をしたヘブンズ・ドアーというスタンドのビジュアル的な面白さを軸にしてしまいそうなところですが、そこを潔く切り捨てている。この潔さは、万人の視聴者を考えてのことでしょう。

 また、高橋一生さんのキャラ作りも秀逸です。岸辺露伴を実写化するなら、紫の服を着て、髪の毛を緑やピンクに染めて……となりそうなものですが、ヘアバンドだけを記号として残して、衣装等はあえてモノクトーンに抑えている。コスプレ感がなく、現実の風景に自然に馴染む存在感になっているため、これも万人に届きやすいポイントです。高橋さん自身も原作を読み込んでいることがよく伝わってくる演技で、容姿だけを取れば岸辺露伴とは違う系統の美男子ですが、作品を見れば露伴そのもの。原作の要素を尊重しつつ、不要なものが切り捨てて、実写ならではの面白さを付加するという点で、理想的な映像化作品になっていると思います」

 『岸辺露伴』シリーズの原点とも言える「懺悔室」は、いったいどんな形で映画化されるのか。5月の公開が待ち遠しい。

(C) 2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 (C) LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

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