16匹の猫の表情に滲む、幸せな暮らしーー後藤由紀子が話題の猫本『京都西陣 町家に暮らす16匹の猫たち』を読む

後藤由紀子書評連載 第2回

愛しい日々の読書

愛情は猫も人も表情ににじみ出る

 いつか訪れたい場所がひとつ増えました。去年、里親探している方からおすすめされたことがありました。家族に相談したら「そんなことしたら、たまがかわいそう」という、娘の猛反対を受けて断念したことが2回ありました。たまを亡くした今、もしあの時にあの子たちを引き取っていたら…と思うこともありますが、きっと悲しみが減ることはなく、今の気持ちは変わらなかっただろうなぁと思います。

 家族ですからね、こればっかりは理屈でどうなるものでもないです。お風呂に入ると、ドアの外で小さくニャンと鳴いて入ってくるたまがいなくなり、毎日毎日バカみたいに泣いていましたが、それでも新年が明けて心機一転、ほんの少しはすっきりした気持ちで日々過ごしていけたらなと思います。

 16年間抱っこしない日はなかったくらいに愛しきりました。この町家に住む16匹の猫たちも、家族やたくさんのお客さんからかわいがられて幸せな人生を送っているのでしょうね。愛がいっぱい詰まっていて心あたたまる暮らしをしていると、猫も人も表情ににじみ出るものです。それを味わいたくて、これからもこの本を、何度も何度も手に取って見続けてしまうでしょう。本棚にしまうことなく、居間に置いておく1冊となりそうです。

■後藤由紀子(ごとう・ゆきこ)
1968年静岡県生まれ。静岡県沼津市の雑貨店「hal(ハル)」店主。庭師の夫、長男と長女の4人家族。センスの良い暮らしぶりが雑誌などで人気。著書に『50歳からのおしゃれを探して』『おとな時間を重ねる 毎日が楽しくなる50のヒント』『毎日続くお母さん仕事』『日々のものさし100』など、暮らしまわりにまつわる著書多数。

■書籍情報
『京都西陣 町家に暮らす16匹の猫たち』
Cat Apartment Coffee 著
価格:本体1,100円+税

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「書評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる