16匹の猫の表情に滲む、幸せな暮らしーー後藤由紀子が話題の猫本『京都西陣 町家に暮らす16匹の猫たち』を読む

後藤由紀子書評連載 第2回

愛しい日々の読書

愛猫たまと16匹の猫

 ちょうど2か月前に愛猫たまが息を引き取りました。16歳なので寿命と言えば寿命。自分の中でも、家族の中でも納得はしているのだけれど、その状況になかなか慣れない時間を静かに過ごしています。帰宅すると玄関で三つ指ついていつも待っていた姿がないことや、ドアの横からじっとこちらを見ている気配とか、体のどこかをそっとくっつける感触とか、かわいいかわいいと抱っこをしていた存在がなくなり、ぽっかり穴が開いた状態でした。

連載第1回:八千草薫『まあまあふうふう。』
 
 そんな時に表紙に惹かれて手に取ったのがこちらの本。

 とても素敵な町家の窓辺、猫たちがそれぞれの座布団を敷いて、ゆったりとくつろいでいるというなんとも居心地の良い写真。幸せな普段の暮らしを物語っています。1枚1枚の写真をじっくり眺めていると自然に目じりが下がっている自分に気がついたりして。猫が16匹とたくさんいるのに、十匹十色でそれぞれの個性が際立っていて面白いものだなぁと思います。

 後半、自己紹介のページがあります。身体は大きいけれど臆病だったり、おねえさんキャラだったり、自分は人間と思っているから猫たちとつるまなかったり……。もう一度、前のページに戻って顔を見ると確かにそんな表情をしています。中でもごはん風景の写真と白玉ちゃんとワンダーちゃんの写真が好きです。たくさんで暮らしていても仲良しと苦手があるのですね。

 そうよね、あるよね。

 古いたんすの引き出しの中で気持ちよさそうに寝ている姿もなんともかわいいものです。この町家がとにかく素敵で、しつらえなどもやり過ぎずうっとりします。そのテンションと猫たちのテンションがしっくりと合いまっているように思います。

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