「魔法科高校の劣等生」「Fate」「このすば」……ラノベ週間ランキング、“スピンオフ作品”が上位席巻

ラノベ週間ランキング分析

 10位に入っている暁なつめ『この素晴らしい世界に祝福を! よりみち』も本編のシリーズとは別に書かれた短編を集めたもの。多くはアニメのBlu-rayやDVDの特典小説で、アクアにめぐみんにダクネスといったダメさぶりで愛されている人気キャラクターたちのなおいっそうのダメっぷりが、ぎゅっと凝縮されたショートストーリーを楽しめる。

 爆裂魔法しか愛せないめぐみんにかかる森や山の連続爆破の疑い。『這い寄る混沌』なるヤバい奴の呪いで、強靱さだけがダクネスに降りかかる災難とも幸運とも言えそうな事態。アクアにだけ見える幽霊が起こす騒動。それぞれのキャラクターを愛するファンなら、見てみたいと期待していた言動を、それぞれにフィーチャーしたストーリーが展開される。書き下ろしの一本も加わって、広がる「このすば」世界でキャラクター愛を深めたい。

 小説投稿サイトからの書籍化作品もしっかりランクイン。2月26日の発売をまだ先に控えて、日向夏『薬屋のひとりごと9』がドラマCD付き限定特装版ともども3位と6位に名前を連ねた。薬師の少女、猫猫が下女として売られた後宮で、宦官の壬氏とともに難事件に挑むといったミステリーで、コミカライズも含めて部数をどんどんと伸ばしている。同じ小説投稿サイト発で、同様に少女の活躍が描かれた香月美夜『本好きの下克上 司書になるためには手段は選んでいられません』シリーズがテレビアニメ化されて評判となっているだけに、『薬屋のひとりごと』にもアニメ化の期待がかかっていそうだ。

 4位の衣笠彰梧『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編1』や5位の三雲岳斗『ストライク・ザ・ブラッド21 十二眷獣と血の従者たち』、7位の川原礫『ソードアート・オンライン23 ユナイタル・リングⅡ』など人気シリーズが安定して上位をキープするランキング。ここに食い込める新人のデビュー作はあり得るのか? 2月7日刊行の第26回電撃小説大賞≪大賞≫受賞作となった二月公『声優ラジオのウラオモテ』の動向を注視しておきたい。

■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ランキング」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる