『ウルトラマン』監督が語る、少年時代の戦争体験 「ある瞬間に突然ポーンと命を取られてしまう」

『ウルトラマン』監督が語る戦争体験

戦争が起きる前兆とは

――昭和から平成を経て、令和の時代まで70年以上同窓会が続いているということですね。しかし、年配の方からこうして戦争の体験を聞ける機会も少なくなってきました。ましてや次の世代は余計にそうです。最近実体験したのですが、現小学生が読書感想文でいまだに『はだしのゲン』を書いているということに驚きと不安を覚えまして。また違う表現、別の形で子供たちに戦争というものを伝える何かが必要だと思い、この本がそんな作品になってくれたらいいなと思っているのですが、先生はこの作品をどの世代に読んでほしいと思っていますか?

飯島:今まさしく親である人たち、戦争を知らない人たちに戦争というものがいかに悲惨なものか、いかに突然やってくるのかというのを理解してほしいし、それを今の子供たちに伝えていってほしいなと思います。僕たちもそうでしたが、みんな戦争に向かっているということがわかっていなかったのです。そして気がついたらもうその道しかなくなっていて、それは非常に怖いことです。

――確かにそうですね。気づかないうちに、ある日突然社会が変わって、今までの常識や価値観が通用しなくなるというのは非常に恐ろしいことです。

飯島:ただ、実は戦争に至る前兆というのはよく社会を見ていたらわかります。今は昔と違って情報がたくさんありますし、微妙な変化というのは社会に反映されるものなので。だからよく勉強して、いろんな人の言葉を聞いて、ひとつの考えに囚われて、ひとつの方向に向かないようにしてほしいなと思います。九官鳥には自分の美しい声があるということを絶対に忘れちゃいけないし、自分の言葉を探す努力をしてほしいということをこの作品を通して伝えられたら嬉しいですね。
(文=関口裕一/写真=佐々木康晴)

■飯島敏宏(いいじまとしひろ)
1932年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、KRT(現在のTBS)に入社、演出部そして映画部に所属し、『泣いてたまるか』を監督する。66年、円谷英二率いる円谷特技プロダクションに、映画部所属の監督として携わる。『ウルトラQ』『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』などのウルトラシリーズ、『怪奇大作戦』など70年、木下恵介プロダクションに出向し、『金曜日の妻たちへ』などを演出。著作に『バルタン星人を知っていますか?』がある。

■書籍情報
『ギブミー・チョコレート』
価格:本体1,800円+税
発行/発売:KADOKAWA
公式サイト:https://www.kadokawa.co.jp/product/321901000150/

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