Lucky Kilimanjaro、3年間の“闘い”の果てに到達したカタルシス コロナ禍の日々と感情を音楽に昇華した幸福な夜
総じて、素晴らしいライブだった。これまでリリースしてきた楽曲、これまでのライブで試みてきた見せ方、そのすべてを駆使して生み出した、Lucky Kilimanjaroというバンドの今までの集大成のようなライブだったと思う。余計なMCを入れることはないし、わざとらしいドラマチックな展開などは用意しない、曲と曲がほぼノンストップで繋がっていく、Lucky Kilimanjaroが突き詰めてきたクラブミュージック的な展開のライブ。しかし、彼らの場合、いわゆるハウスビートの曲だけでなく、例えば新作『Kimochy Season』に収録されている「咲まう」のような穏やかな演奏と歌が映える楽曲もある(熊木幸丸は座って歌っていた)。
そんな「咲まう」のような曲も、彼らが一晩のセットを通して生み出す雄大な音楽の「流れ」の中では、ドラムンベース的なビートの「地獄の踊り場」とTikTokを起点に一躍大人気曲になった爽やかでポップな「Burning Friday Night」の間に、自然と佇むことができる。他にも、「越冬」の優しいメロウネスは「MOONLIGHT」の深いロマンティシズムに繋がり、「エモめの夏」の爽やかさは「千鳥足でゆけ」の軽妙なグルーヴに繋がり、「闇明かし」の覚醒感は「太陽」の大らかなダイナミズムに繋がった。曲と曲が生み出す大きな抑揚とうねり、それらがとても自然な形で生み出すカタルシス。繋がっていく曲たちはLucky Kilimanjaroというバンドの歴史を横断していくようであり、そして、私たちが生きてきた様々な色の日々を、抱いてきた数多の感情を、すくい上げ、音楽という光によって昇華していくようだった。
話は前後するが、ライブの1曲目は「光はわたしのなか」だった。この選曲が、今回のツアーが単なるアルバムのリリースツアーというだけの枠に収まらないものであることを示していた。「光はわたしのなか」は2020年5月、メジャー1stアルバム『!magination』をリリースした直後、コロナの影響でツアーが延期になった際に急遽リリースされた1曲で、歌詞には当時の熊木の心象が生々しく刻まれている。2021年のアルバム『DAILY BOP』にはCD盤のボーナストラック扱いで収録された、この特別な存在感のある1曲を彼らはライブの始まりに持ってきた。この日のライブが、ここに至るまでの3年間の日々を背負ったものであることを物語るように。熊木は、この曲がリリースされた当時の状況をそのまま記した〈憧れのリキッドルームはおあずけ〉という歌詞を、〈憧れの豊洲PITで歌うよ〉と替えて、力強く歌っていた。
Lucky Kilimanjaro 熊木幸丸、自問自答の末に辿り着いた“踊ること”の本質 ダンスミュージックを通して表現する心の流動性
Lucky Kilimanjaroの新作アルバム『Kimochy Season』は、しなやかで美しく、繊細で勇敢な傑作である。こ…
Lucky Kilimanjaro 熊木幸丸、ダンスミュージックで表現する人間の複雑性 「誰にでも存在する地獄をちゃんと認めたい」
Lucky Kilimanjaroがデジタルシングル『ファジーサマー』をリリースした。ラッキリの夏曲といえば「エモめの夏」を思い…