Cateen(かてぃん)=角野隼斗、yonkeyら個人活動をバンドに還元するミュージシャン 表現の場を広げて新たな刺激に

 かねてから音楽シーンでは、バンドメンバーとしてだけでなく、単独でも音楽活動を行いバンドの音楽に反映させているミュージシャンが当たり前に存在している。星野源のサポートとしてライブに参加している4人組バンドOKAMOTO'Sのハマ・オカモト(Ba)をはじめ、SixTONES「マスカラ」の提供をするなど音楽プロデューサーとしての一面を持つKing Gnu及びmillennium paradeのメンバー常田大希(Gt/Vo/Pf)やエレファントカシマシのボーカルにしてシンガーソングライターの宮本浩次などがそうだろう。

 ソロミュージシャンとしての活動や他アーティストのサポート、楽曲提供によるプロデュースなどバンドを離れた動きにも様々な形がある中で今回は、最近注目のバンドにスポットを当て、自身の経験をグループの音楽へと還元しているミュージシャンを紹介したい(再生回数、登録者数はいずれも2023年6月22日現在)。

Penthouse・角野隼斗(Cateen)

 東京大学の音楽サークルをきっかけに結成され、男女ツインボーカルでソウルフルな音楽が人気の6人組シティソウルバンド、Penthouse。曲の繊細さや世界観を作り上げる重要なパートを担う角野隼斗(Pf)は、ソロのピアニストとしての顔も持っている。

 「Cateen (かてぃん)」名義の個人YouTubeチャンネル登録者数は120万人超え。ショパン国際ピアノコンクールではセミファイナリストになるほどの経歴を持ち、さらに独創的なアレンジによってピアノを披露する動画で話題を呼ぶ大人気YouTuberとしても活躍している。コロナ禍にアップされたYOASOBIの「夜に駆ける」を穏やかにアレンジした「夜に駆けない」は約570万回、小さなピアノで圧倒的な速弾きを披露している「トイピアノで全力で弾くトルコ行進曲」は1000万を超える再生回数を叩き出し、“おうち時間”の多かった期間に出された上品かつユーモア溢れる動画で一気に登録者数を伸ばした。最近では自身最大規模の全国ツアー『角野隼斗 全国ツアー 2023 “Reimagine”』を成功させ、クラシックピアニストとしての地位も確立している。

トイピアノで全力で弾くトルコ行進曲

 Penthouseの知名度を一気に上げるきっかけとなったメジャー1st配信シングル「単焦点」のイントロや、最新曲「蜘蛛ノ糸」の間奏で角野のピアノテクニックが存分に発揮されており、クラシックで培った技術や独自の表現力が楽曲にエッセンスを加え、唯一無二のPenthouseの音楽を確立させていると言える。

Penthouse - 蜘蛛ノ糸 [Official Music Video]

Klang Ruler・yonkey

 Klang RulerはYouTube企画でのブラックビスケッツ「Timing〜タイミング~」カバーの爆発的な人気で一気に知名度を上げ、今年も数多くのフェスやイベントへの出演が決まっている今勢いのあるバンドだ。そのフロントマンでありZ世代から熱い支持を受けるyonkey(Vo)は、個人で音楽プロデューサー兼トラックメイカーとしても活躍している。

ブラックビスケッツ / タイミング 〜Timing〜 Covered by Klang Ruler

 幼少期に触れたクラシックから音楽に興味を持ち、高校でKlang Rulerを結成。18歳でEDMに興味を持ったことをきっかけにトラックメイキングを始め、カバーした楽曲をSNSに投稿するようになった。その後バンドでの活動を行いながら、音楽プロデューサーとしても数々のラッパーやアーティストとコラボ、楽曲提供をしている。AAAMYYYとのコラボ楽曲である「ダウナーラブ (feat. AAAMYYY)」やラッパー・空音とのコラボ楽曲「Fight me feat. yonkey」、chelmicoによるCMソング「爽健美茶のラップ」のリミックスでも話題を集めている。最近TikTokで「首振りダンス」が大きくバズり、グループのメディア露出も目立つようになった新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」の作曲をしたのもyonkeyだ。

ATARASHII GAKKO! - オトナブルー (Official Music Video)

 個人では多岐に渡ってあらゆるジャンルのアーティストと共にシーンを盛り上げ、その経験をKlang Rulerのコンポーザーとしてバンドの音楽性をより極める上で反映させているように感じる。yonkeyの作り出す自由で個性的な音がバンドとしての面白さをより拡張し続け、新しい形となった「Timing〜タイミング〜」が20年以上の時を越えて再び注目されているのだろう。

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