FIFTY FIFTY、Aiobahn feat. KOTOKO、Lucky Kilimanjaro……チャート上位を賑わすTikTok×ダンスミュージックの新潮流
近年の音楽シーンの流れを俯瞰して振り返ると、SNSを契機としたバイラルヒットが数多く生まれており、その中でも特にTikTokが誇る影響力は非常に大きい。様々な動画の投稿をきっかけに、新旧、また国内外を問わず、多数の楽曲が通常のチャートアクションとは異なる形で注目を集め、リスナーとアーティスト双方にとってTikTokという場の重要性は高まり続けている。上述したヒットの中には、「#踊ってみた」をはじめとしたハッシュタグを付けたダンス映像の投稿から話題が広がっていくパターンも少なくない。この記事では、Spotifyのバイラルチャートを席巻しているTikTok発の最新ダンスナンバーをいくつか紹介していく。
FIFTY FIFTY「Cupid - Twin Ver.」
まず最初に紹介するのは、2022年にデビューした韓国の4人組グループFIFTY FIFTYの楽曲「Cupid - Twin Ver.」。この曲は、韓国語と英語で歌う「Cupid」の全編英詞バージョンであり、どちらの楽曲もストリーミングで高い再生回数を記録している。Spotifyのデイリーバイラルチャートでは、複数週にわたりバージョン違いの2曲が同時にトップ10入りを果たしており、こうした快挙からも同楽曲の人気の高さが窺える。同曲のヒットの要因の一つとなっているのが、真似しやすいキュートなダンス。上述したように、この曲もファンがTikTokで「#踊ってみた」動画を投稿したことで人気に火が付いたケースの一つである。また、この曲の90年代前半のポップスを彷彿とさせる“レトロ感”が、今の10代や20代のリスナーに新鮮に響いており、現行のリバイバルムーブメントを象徴する一曲と言えるだろう。
メイ・スティーブンス「If We Ever Broke Up」
続いて、現在19歳、イギリス出身のシンガーソングライターのメイ・スティーブンスの楽曲「If We Ever Broke Up」。現行の音楽シーンにおける潮流の一つとなっているY2K(Year2000)の文脈に通じる楽曲で、一つ前に紹介したFIFTY FIFTY「Cupid - Twin Ver.」と合わせて聴くことで、近年における新たなリバイバルムーブメントの到来を明確に感じ取ることができる。この曲は、昨年末にメイ・スティーブンスが自身のTikTokアカウントでシェアし、年明けのわずか一夜で瞬く間に大きな反響を得たという経緯がある。まさに、TikTokを契機とした現代のシンデレラストーリーとも呼ぶべきエピソードだ。同曲がそうした大きな注目と支持を集めた理由は、切実な恋愛模様を巡る共感性の高い歌詞にある。日本では、〈Broke Up〉(別れ/破局)という同曲のテーマを表す「#破れハート」というハッシュタグが生まれ、著名人を含めた数多くの人々がこのタグを付けたダンス動画を投稿している。"レトロ感"とキャッチーなダンスの掛け合わせは、現在のバイラルヒットの一つの方程式と言えるかもしれない。