『ONE PIECE』新OP「天使と悪魔」が名主題歌である必然と理由 尾田栄一郎&GRe4N BOYZの深い絆
『魚人島編』の特別編集版を挟む形で休止期間に入っていたアニメ『ONE PIECE』(フジテレビ系)の『エッグヘッド編』が、4月6日の放送回から再び動き始めている。新OP主題歌「天使と悪魔」を手掛けたのはGRe4N BOYZ。このグループと『ONE PIECE』の関係は、以前からとても深い。
最初の接点は、作品の大ファンであるメンバーたちの強い希望によるコラボレーションのオファーだったのだという。その際は諸般の事情によって実現には至らなかったそうだが、原作者の尾田栄一郎は絵を描いて彼らにプレゼント。そして数年後、両者のコラボレーションはついに次々と実現していった。
2015年から2020年にかけて東京タワー内で営業していたテーマパーク・東京ワンピースタワーは、さまざまなアトラクション、ショー、ショップ、レストランなどが来場者を楽しませていた。2017年に同施設内で開催された『連載20周年記念特別企画展 “ログギャラリー”』では、GRe4N BOYZ(当時はGReeeeN)が選んだ名シーンをメンバーのコメントとともに届ける「GReeeeN Island」を展開。また、同タイミングで上演されていたショー『ONE PIECE LIVE ATTRACTION“3”「PHANTOM」』のOP曲「4 ever ドーン!!!!!」、尾田が描き下ろした新キャラクター・歌姫アンが歌う「PHANTOM ~約束~」も彼らが提供した作品だった。
そして、2022年の全国ツアー『GReeeeNと不思議な大脱走』の際のコラボレーションもものすごかった。この年の全国ツアーのキービジュアルには、尾田がキャラクターデザインをしたメンバー4人の姿も。描き下ろしのキャラクターデザインによるメンバー各々の姿は、2023年1月に大阪と東京で開催されたアリーナ公演『GReeeeNと不思議な大集合 ~リーナルーデ 大脱走•破•急 2023~』でも観客を沸かせていた。素顔を公表せず、シルエットやイラストを主軸とするビジュアル表現を、このグループはデビュー以来、一貫して打ち出している。独特な持ち味を最大限に活かしたコラボレーションは、メンバーたちにとって心の底から嬉しいものとなったに違いない。
コラボレーション、タイアップには、“ビジネス”というドライな響を持つ要素がつきまといがちだが、GRe4N BOYZと『ONE PIECE』の関係を辿ると、そこには心あたたまるものが自ずと伝わってくる。両者の最初の接点の際に尾田がイラストをプレゼントしたのは先述の通りだが、「今回は実現できなくて本当にごめんなさい」という“尾田栄一郎”という個人としての素朴な想いが、のちに繋がる両者の交流の起点なのだと思う。ビジネスはさまざまな企業が関わるからこそ、作品を生み出すアーティストの「やってみたい!」というピュアな衝動だけではどうにもならないこともきっと多々あるだろう。しかし、少しずつ関係性を深めるなかで可能性を探り合い、一緒に形にできるものを世に送り出してきたのがGRe4N BOYZと『ONE PIECE』だ。
メンバー4人にプレゼントしたイラストに込めた当時の想いについて、尾田は、「ライブの中で一瞬でもこの絵に変身してくれたら、僕だけこっそり喜ぶよ」(※1)と、2022年の全国ツアーに寄せた手描きコメントで表現している。密かに夢見たことは、長い時間をかけて幸福な形での実現に至った。アニメ『ONE PIECE』の新OP主題歌「天使と悪魔」も、そういう積み重ねのなかから生まれている。仲間のために全力を尽くすキャラクターたちが輝く作品の音楽があたたかな心の交わし合いに根差しているのを感じると、とても嬉しい気持ちになる。