『D4DJ』、『電音部』、『MILGRAM』……様々な角度からキャラソンの魅力楽しめる、話題のコンテンツ3選
アニメ音楽や声優楽曲周りの注目新譜を紹介する本連載。今回はそれらのジャンル特有の文化である「キャラクターソング」を切り口に、3つのコンテンツの音楽作品をピックアップします。というのも、このところ音楽を軸にした面白い新規キャラクターコンテンツが続々と登場しているから。音楽を通じたキャラクター表現、あるいは、キャラクターを通した音楽表現という、声優×作品×キャラクター×音楽……と、あらゆるレイヤーが重なっているからこそ、間口が広く、様々なアングルから楽しめるキャラソンの魅力に、ぜひ触れてみてください。
最初に紹介するのは、ブシロードによる「DJ」をテーマにしたメディアミックスコンテンツ『D4DJ』。2019年にプロジェクトが本格始動した本作には、DJとパフォーマーで構成された6つのDJユニットが登場。それらを演じるキャスト陣は、実際にDJやダンスパフォーマンスを交えたリアルライブを展開しており、同じブシロードのバンド×キャラクターコンテンツ『BanG Dream!(バンドリ!)』のDJ版といった趣きです。これまではライブやTV番組・ラジオなどが中心でしたが、この秋にスマートフォン向けリズムゲーム『D4DJ Groovy Mix』、TVアニメ『D4DJ First Mix』(TOKYO MX、BS日テレほか)がスタート。DJ文化がより浸透して学校内でクラブイベントが日常的に行われるような世界観、愛らしくも個性的なキャラクターたちの魅力が広まっているようです。
音楽的な特徴としては、いわゆるDJ向きのダンスミュージックを軸に置きつつ、6ユニットそれぞれに別々の音楽プロデューサーが存在し、各ユニットが違った方向性のサウンドを打ち出しているのが本作の面白いところ。例えば、水樹奈々らへの楽曲提供で知られる上松範康(Elements Garden)がプロデュースするPeaky P-keyは、熱さとクールさを併せ持ったダンスナンバーが中心。メンバーにギタリストを擁する燐舞曲はエレクトロニコア〜ラウドロック系(MY FIRST STORYのShoなどが楽曲提供を行っています)、セクシーなキャラが揃うMerm4idはパリピ感のあるキャッチーなダンスポップ、お嬢様学校に通うLyrical Lilyは、センターの桜田美夢(CV:反田葉月)が歌謡曲好きという設定に合わせてか、どこか懐かしいメロディの楽曲が多いのが特徴です。
そしてこの度、1stシングル「Discover Universe」をリリースしたのが、出雲咲姫(CV:紡木吏佐)、新島衣舞紀(CV:前島亜美)、花巻乙和(CV:岩田陽葵)、福島ノア(CV:佐藤日向)の4人から成るユニット・Photon Maiden。未来感のあるビジュアルとシンクロ率の高いダンスパフォーマンスが魅力で、エレクトロハウス寄りの音楽性も含め、イメージとしてはPerfumeのようなダンス&ボーカルユニットに近い印象かもしれません。シングル表題曲の「Discover Universe」は、ハードコアテクノ界隈ではDJ Genkiの名で知られる彦田元気が作編曲を担当。アップリフティングなビート、昂揚感に満ちたサビはもちろんのことながら、歌もののポップミュージックとしては珍しく、曲間に2分以上ものブレイクがあり、タメで緩急をつけることによってさらなる起爆力を生む、EDM的な楽曲構成・手法を踏襲したナンバーになっています。fu_mouの提供によるカップリング曲「A lot of life」も、ユーフォリックなハウストラックに4人の美麗な歌声が映えるクラブ仕様。
さらに11月4日には、『D4DJ』のメインユニットとなるHappy Around!の1stシングル『Happy Music♪』が登場。愛本りんく(CV:西尾夕香)、明石真秀(CV:各務華梨)、大鳴門むに(CV:三村遙佳)、渡月 麗(CV:志崎樺音)の個性豊かな4人で結成された彼女たち。特に主人公の愛本りんくは、アフリカの大自然育ちのため通常とは少しズレた価値観を持ちつつも、周囲の人々を引き込むスーパーポジティブな性格の持ち主ということで、彼女たちの楽曲も超ハッピーなバイブスに溢れています。PandaBoYが作編曲した表題曲は、学校のチャイムの音やスクラッチ音、ジュリアナテクノっぽいシンセフレーズなどが賑やかに詰め込まれたハイテンションなナンバー。ハッピーハードコアなアゲアゲ感と4人の底抜けに明るく可愛らしい歌声を聴いていると、思わず笑顔で踊ってしまうこと間違いなし。メンバーが自己紹介(と他己紹介)でソロパートを繋いでいく、4人の仲の良さと絆が形になったアッパーなダンスポップ「君にハピあれ♪」を含め、まさにハッピー全開なシングルに仕上がっています。
なお、今後も燐舞曲、Merm4id、Lyrical Lily、Peaky P-keyが順次1stシングルを発売。さらに彼女たちがライブやゲームで披露しているカバー楽曲をまとめたカバーアルバム第1弾『D4DJ Groovy Mix カバートラックス vol.1』のリリースも決定しています。先日第1話がYouTubeで先行公開されたTVアニメでは、ヒャダイン提供によるオープニングテーマ「ぐるぐるDJ TURN!!」(歌唱はHappy Around!と山手響子、出雲咲姫)に加えて、エンディングで天野愛莉(CV:水樹奈々)と姫神紗乃(CV:Raychell)が歌うH Jungle with t「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント〜」のカバーも話題になっており、この先さらなるムーヴメントを起こすことになりそうです。
そんな『D4DJ』と同様に、ダンスミュージックをテーマにした音楽原作キャラクタープロジェクトが、バンダイナムコエンターテインメントのサウンドエンターテインメント事業・ASOBINOTESが今年6月に始動させた『電音部』。こちらの作品もDJカルチャーが一般化した世界が舞台で、「電音部」と呼ばれる部活動でDJや作曲活動を行う高校生たちがメインキャラクターになります。面白いのは、そのキャストや楽曲を制作するクリエイターの人選。キャラクターは、アキバ、ハラジュク、アザブ、シブヤの各エリアの学校に通う3人組からなっているのですが、アキバの外神田文芸高校のキャストには、秋葉原を拠点にするディアステージ所属のアイドル・歌手たち(蔀 祐佳、天音みほ、堀越せな)を起用。ハラジュクの神宮前参道學園はクロコダイル所属の声優(小坂井祐莉絵、大森日雅、元NGT48の長谷川玲奈)、アザブの港白金女学院には『Tokyo 7th シスターズ』のKARAKURIなどで多くのダンスチューンを歌ってきた秋奈、個人でDJ活動も行う小宮有紗、澁谷梓希(i☆Ris)といった声優が参加し、シブヤの帝音国際学院ではにじさんじ所属のVTuber(健屋花那、シスター・クレア、星川サラ)がキャストを務めています。アイドルやVTuberといった、声優コンテンツと親和性のあるジャンルの人材を引き入れることで、より広がりを生む狙いがあるのでしょう(ちなみにアイドルのキャスト起用に関しては『D4DJ』にも同じことが言えます)。
そして、クリエイターにはtofubeats、kz(livetune)、ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、TAKU INOUE、Yunomi、パソコン音楽クラブ、佐藤貴文(BNSI)、Shogo&早川博隆ら多方面で活躍する作家/アーティストに加え、Aiobahn、KOTONOHOUSE、Moe Shop、Nor、PSYQUI、Snail's House、TEMPLIME、YUC'eといった気鋭のDJ/トラックメイカーが参加。VTuberの周防パトラ、ミディ&瀬戸美夜子も名を連ねており、今のクラブやネット界隈で人気を集めるダンスミュージック系のクリエイターが一堂に会したようなラインナップになっています。
そんな『電音部』から、4カ月連続でミニアルバムのCDリリースが決定。第1弾として10月28日にリリースされるのが、アキバエリアの外神田文芸高校の面々による楽曲をまとめた『New Park』です。日高零奈(CV:蔀 祐佳)が歌う「Favorite Days」はkz(livetune)制作による煌びやかなフューチャーベース。キラキラとしたウワモノ、ズシンと響くハウシーなビート、一気に駆け抜けるような曲展開が気持ちいいです。東雲和音(CV:天音みほ)のソロ曲「Mani Mani」は、2ステップやフィジェットハウスのフィーリングも感じさせるTAKU INOUE製のダンストラック。艶めいた歌声とサックスの音色がラグジュアリーな夜を想起させる、ダンスフロア直撃の強烈な一曲と言えるでしょう。異色なのが、佐藤貴文(BNSI)が手がけた茅野ふたば(CV:堀越せな)による電波な狂騒曲「アイドル狂戦士」。途中でマッドなギターソロまで飛び出す圧の強すぎるサウンドもさることながら、堀越による振り切れた歌唱がとにかく素晴らしいです。そして3人によるエリア曲「Hand Over」は、星宮とととの楽曲などで人気を集めるTEMPLIMEプロデュースによる、UKガラージ〜ベースラインハウス風味のお洒落なナンバー。いずれも斬新さと親しみやすさを兼ね備えた、クラブで大音量で聴きたいダンスミュージックに仕上がっています。
アキバエリア以外のキャラクターの楽曲も、現在配信およびサブスクで続々と解禁中。どれもハイクオリティですが、個人的には灰島銀華(CV:澁谷梓希)の憂いを帯びた歌声が絶品なパソコン音楽クラブ製のアーバンミッド「Haiiro no kokoro」、ブリブリのアシッドベース×トラップ風のビート×わちゃわちゃした萌え声の掛け合いに悶絶必至な神宮前参道學園電音部による「Hyper Bass」(プロデュースはYunomi)辺りがおすすめです。
なお『D4DJ』と『電音部』はどちらも、オリジナル楽曲の二次使用を一定の条件のもとにおいて容認することを発表しています。例えば、自分でリミックスした楽曲をSoundCloudなどの音源共有サービスにアップしたり、DJでプレイすることもOKの模様(詳細については、それぞれの公式サイトをご確認ください)。アニクラ界隈では非公式のリミックス音源が制作されたり、現場でプレイされることもままありますが、それについて公式サイドがガイドラインを設けて使用を認めるのは極めて珍しいこと。ある種、DJやクラブカルチャーへの理解を示す取り組みと言えるでしょう。