倖田來未、前代未聞のベスト盤に詰まったエンターテイナーとしての矜持 先駆者が語る『No No Girls』への共感も

倖田來未が語る前代未聞のベストアルバム

 2024年12月にデビュー25周年アニバーサリーイヤーを迎えた倖田來未が、3月26日にベストアルバム『LIVE IN METAVERSE ~THE BEST~』をリリースした。同作は“NEO BEST ALBUM”と題されており、2093年12月6日に行なわれる“未来のBEST LIVE”がコンセプト。今作のためにRe-Vampされた収録曲は、オーディエンスの歓声やライブ会場にいるかのようなサウンドとなっていて、迫力満点だ。“単なるベストアルバム”で終わらない、倖田らしい1枚となっている。そんな同作について、制作秘話や作品に込めた思いなどを本人にたっぷり語ってもらった。(高橋梓)

“Re-Vamp”をキーワードに制作した前例のないベストアルバム

ーー『LIVE IN METAVERSE ~THE BEST〜』は“NEO BEST ALBUM”という新しい形のベストアルバムになっています。

倖田來未(以下、倖田):25年も活動していると、5年に1回くらいのスパンで「そろそろベストアルバムを出しましょうか」と提案されるんです。でも、ルーティーンのようになってしまうと、作品作りに対してドキドキもワクワクもしなくなると思いますし、私が楽しさを感じられないと良い作品もできないと思っていて。チームにも「ルーティーンのように『回ってきたからやる』のだけなのはよくない」という話をしているんです。回転寿司ちゃうねんから、って(笑)。

ーー(笑)。キャリアが長いがゆえ、ですね。 

倖田:しかも、今の時代においてベストアルバムの価値はどこにあるのかなと考える部分もあって。サブスクでそれぞれが好きなようにプレイリストを作れる時代には合っていないんじゃないかなとも思ったんです。じゃあ、どうすれば私もみんなもワクワクできるか。去年行ったツアー(『KODA KUMI LIVE TOUR 2024 ~BEST SINGLE KNIGHT~』)の幕間映像で倖田來未がメタバース空間を歩くシーンのことを思い出して、そこを基点とした作品にしたらどうかな、それで今年の秋のツアーにも繋げたらどうかな、と思いついたんです。

ーーなるほど!

倖田:そこから何年後の未来を舞台にするかを考えていったのですが、はじめは2893年のようにはるか未来にしようと話していたんです。でも、数字の並び的に西暦に見えなくなってきちゃって(笑)。それで、“來未”の語呂合わせで2093年にしました。しかも、普段私がやっているライブであれば途中にバラードを挟んでクールダウンするパートを作るのですが、「メタバースでアバターがライブするならアップテンポの曲ばっかりでもイケるやん!」と思って、生身の自分では実現が難しいライブを作ろうと考えました。

ーーだからアップテンポの楽曲が詰まっているのですね。

倖田:そうなんです。「ライブでテンションの上がる曲」ということでファンのみなさんに投票してもらって、その結果をもとに私の希望も入れつつ収録曲を決めました。

ーー曲もそのままオリジナル音源を収録するのではなく、『LIVE IN METAVERSE ~THE BEST〜』仕様にリニューアルされていますね。

倖田:サウンド感にはめちゃくちゃこだわりました。例えばですが、私、ドキュメンタリームービーって本当にリアルなのかなと思ってしまうんです。切ない顔をしている場面があったとして、カメラがあるから撮られている側が切なそうな顔をしているのか、本当に切なくてそういう顔をしているのかって、結局映されている本人にしかわからないじゃないですか。もし「ドキュメンタリーになるから、切なさを演出しとこかな」と思っていたら、リアルじゃないし。ライブの映像作品もそう。リアルを収録してはいますが、振りを間違っているところをカットすることもあります。要は「リアルに起こっていることを綺麗に作り上げたもの」なんです。もちろん、CDもそうですよね。

ーーたしかに。

倖田:その逆転の発想で、綺麗に出来上がっている楽曲を“Re-Vamp”(直訳は改造、刷新の意)して、ライブ会場にいるかのようなサウンドにしたらどうだろうと。リアレンジではなく、“Re-Vamp”という言葉にこだわっていて、もともとある楽曲をライブ風に崩していくという作品を作ることにしました。チームでも調べたんですけど、おそらくこれまで誰もやっていなかったことだと思います。それで、ライブはやっぱりドラムの“チッチッチッ、ジャーン”という音で始まるのがカッコイイよなとか、それならお客さんの声も入れたい、ボーカルも入れ直したいなど、ああでもない、こうでもないと試行錯誤しながら作っていきました。制作チームのみんなも「めっちゃおもろいやん」と乗ってくれたので、遊び心を持ちつつ、細部までこだわって作ることができましたね。

ーーSNSにも、「私の遊び心を受け取ってくれると信じて」というポストをされていました。

倖田:そうそう! 言ってしまえば、すべてリリースされている楽曲なので「寄せ集めやん」という気持ちで聴くのと、「ここはメタバースで、2093年なんだ」と思いながら聴くのでは違うと思うんです。しかも、「2093年なんだ」と思いながら聴いてくだされば、2093年に連れて行く自信もあります。ただ、どう受け取ってもらえるのかは、リリースされてみないと正直わからない。(CDを手に取りながら)CDの帯の裏側も買った人にしかわからないデザインにしてあったり、楽しみながら自分なりの遊び心を詰め込みました。

初のレコーディングスタイルにも挑戦 こだわったのは“ライブ感”

ーーそしてファンクラブ投票で選曲された収録曲は、“アゲ曲”ばかりですね。結果をご覧になっていかがでしたか?

倖田:「来たわ!」と思いました。こういうファン投票って、シングル曲がランクインするのが普通じゃないですか。でも1位の「UNIVERSE」はアルバム曲、2位の「XXX」はカップリング曲なんです。当たり前かもしれないですが、数合わせのような曲を作品に入れるのがイヤで、デビューした時からアルバムやカップリング曲にも命を懸けようと決めているんですね。例えば、デビュー曲の「TAKE BACK」はもちろん良い曲なんですけど、お母さんに向けて書いたカップリング曲「Your Song」のほうが思い入れが強い、なんてこともあります。

ーー収録曲で言うと、「UNICORN」のフルバージョンが新曲として収録されています。約1年前にリリースされたアルバム『UNICORN』のIntroductionとして収録されていましたが、フルはどのタイミングで制作されていたのでしょうか。

倖田:本当は去年のツアーファイナルのタイミングでサプライズリリースしようと考えていて、その頃にはある程度制作をしていました。でもバタバタしてツアーファイナルに間に合わなくて。かといって突貫工事で作るのもイヤだったので、今回満を持して収録しました。

ーーその繋がりでいうと、アルバム『WINGS』のInterludeだった「BLACK WINGS」も今回初収録です。

倖田:そうそう。「私、盤で出してへんかったん?」と思って。ファンの方でも盤で持っておきたいという方がいらっしゃるんですよ。他にもまだ盤に入っていない曲があるので、収録できる機会があったらいいなとは思っています。

ーーその他、「UNIVERSE」、「LIT」、「Crazy 4 U」、「Vroom」に関してはレコーディングをし直されているとのこと。以前リリースした時との違いも感じましたか?

倖田:それが、みなさん「◯◯のツアーの時の『UNIVERSE』」というように細かく書いて投票してくれているんです。「Crazy 4 U」も、2004年にリリースしたものではなく、去年の『KODA KUMI LIVE TOUR 2024 ~BEST SINGLE KNIGHT~』の時の「Crazy 4 U」で。

ーーあぁ、なるほど!

倖田:新しいバージョンが好きと言ってくれるのは嬉しいですよね。ただ、たしかに「Crazy 4 U」は21歳くらいの時の曲ですから、20年も時が経っているのに未だに愛してもらえるのは幸せ。

ーーレコーディングは踊りながら歌われたそうですね。

倖田:ライブやから、ステップを踏みながら歌っていました。ライブの臨場感を出すためにも、落ち着いて綺麗に歌おうということを今回はしていなくて。いつもなら小分けに何回も歌うスタイルでレコーディングをするのですが、今回は通しで2~3回歌って完成させるというライブっぽさを大切にしました。ハンドマイクを持ってレコーディングすることも試したのですが、ちょっと声がブレすぎてしまうのでボツになってしまいましたが、いろんな試みをしながらライブ感を出しましたね。

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