早見沙織、ファンを先導し熱狂へと導く歌声 史上最も“攻めた”ライブで見せたボーカリストとしての凄み

2025年にアーティストデビュー10周年を迎える早見沙織。その大きな節目を前に、大阪・東京の2都市、3公演で開催されている『Hayami Saori セメ Live Vol.1』では、そのストレートなタイトルそのままに、早見沙織史上最も“攻めた”ライブが展開されている。
筆者は3月30日にEX THEATER ROPPONGIで行われた東京公演に参加した。早見のこれまで見たことのない姿、アーティストとしてのさらなる色を感じさせる、“早見ワールド”を拡張するライブであるように思う。本記事では、ライブの何が“セメ”なのかをポイント毎に解説していきたい。
以降、一部セットリストのネタバレ有
スタンディングエリアを含む、ライブハウス会場で開催されている今回の『セメ』。バックバンドの渡辺拓也(Gt/BandMaster)、中村昌史(Ba)、白井アキト(Key)、北村望(Dr)を率いたステージで早見が見せたのは、エネルギッシュで、ロックな姿だった。象徴的なのは「視紅」「僕らのアンサー」「残滓」と続く、冒頭のブロック。例えば「残滓」では、原曲の柔らかく愛らしい歌声とは異なり、真っ直ぐで力強いボーカルが届けられる。それは新たなバンドアレンジに引っ張られてのことだろう。ファーストコンサートから歌われている「僕らのアンサー」も、より勇ましく生まれ変わっており、CO2特効が飛び出すロックバンドさながらの演出には驚きを隠せなかった。スタートからトップギアのステージングに、会場の熱気も早見がMCで「MAXのテンションでぶつけていただいて嬉しいです」と振り返るほど一気に上昇していた。


最近では2023年開催のツアー『HAYAMI SAORI Tour 2023 "白と花束"』や今年1月に行われたオーケストラコンサート『HAYAMI SAORI Orchestra Concert 2025』など、ストリングスを入れてのライブが定番にもなっており、今回のシンプルな編成とステージ演出は逆をいった“セメ”とも捉えられる。当然セトリ全体がバンドアレンジとなっていることは言うまでもないが、筆者が中でも心を掴まれたのは「琥珀糖」と「curtain」だった。前者は“セメドレー”と題したアルバム『JUNCTION』からの選曲を中心にしたジャズ~シティポップ~AOR要素が感じられるブロックを抜け、ポエトリーリーディングや『セメ Live Vol.1』で追加されたアウトロの大胆なアレンジが印象的な「フロレセンス」、喪失を歌った「Abyss」を経ての、言わば前半の大きな山場の位置にあった。大サビ前、早見の息を吸う音が聞こえてくるほどに静まり返った会場。切々とした声で早見が〈行かないで〉と歌った後に、渡辺の激しいギターサウンドがかき鳴らされる。

一方の「curtain」は、「Guide」「Awake」の流れから披露された、音源化されていないいわゆるレア曲。ライブでのみ披露されてきた楽曲だが、これまではピアノでの伴奏で演奏されていた。今回はバンドアレンジ、そしてフルサイズでの披露となっており、それも“セメ”た部分として数えられるだろう。