台湾最大のフェス『大港開唱Megaport Festival』 くるり、Creepy Nuts、拍謝少年 Sorry Youth、Andr……熱狂のステージ

土井コマキのアジア音楽探訪 Vol.14
3月29日、30日の2日間、高雄で開催された台湾最大のフェス『大港開唱Megaport Festival』に行ってきました。私にとって二度目の参加。出演アーティスト発表に関係なく、チケットが一瞬で売り切れる大人気のフェスです。今年も多数の日本のアーティストがラインナップされていて、どのアーティストも熱いファンに迎えられていました。またYouTubeで一部ライブ配信があったので、そちらを日本から観た人も多いのでは?



どこでも通常営業なCreepy Nutsは、MCさえ日本語でいつも通り。喋っている内容を伝えたいと思っているのかどうかも分からないけれど伝わってる! なんだこれは! オーディエンスのノリもいつも通り! ラップの内容もどこまで理解されているのか分からないけれど、変幻自在な声色やクールなトラックが、色んな壁を壊すのかもしれない。Creepy Nutsの実力ですよね。大きな港が爆踊りでした。面白かった。






15年ぶりの台湾でのライブになったくるりは2日目の「女神龍」ステージのトリ。サウンドチェックの「ハイウェイ」からすでにファンを釘付けに。きっとみんながずっと聴きたかったであろうメロディたちが、熱のこもった演奏でプレイされる。岸田(繁)さんの「多謝(台湾語でありがとうの意味)」をはじめ、親近感の湧くMCで、ステージ上と大観衆の気持ちがどんどん近くなっていく。今回初めて外国でくるりのライブを観て「everybody feels the same」が持つパワーを改めて感じました。歌詞に出てくる都市名をその土地の名前(今回は高雄)に替えるという、ベタかもしれない演出も、あの現場で聴くと本当に心を打つし、「みんな同じ気持ちだよ」というメッセージは、何よりも温かくパワーをくれる。台湾のロックファンも勇気づけられたかもしれない。





そしてホールを満員にしたWONKも印象的でした。ホール内は自由にグルーヴして踊るオーディエンスでいっぱい。各パートのソロで起きる歓声の大きさ、ボーカルに促されて歌う声の大きさに驚き感動しました。本当に出演アーティストのセレクトがジャンルレスで多岐に渡るのですが、どのジャンルにもしっかりとファンがいて、めちゃくちゃ盛り上がるので、熱いフェスだなぁと改めて思いました。素晴らしいです。





さて、地元台湾のアーティストですが、昨年『FM802 MINAMI WHEEL』に出演してくれた拍謝少年 Sorry Youthが覚悟を決めたメッセージ性の高いステージを繰り広げていて、とても感動しました。『大港開唱Megaport Festival』と彼らは、切っても切れない縁があり、彼らのホームだと言って過言ではありません。今年も一番大きな、港のそばの「南霸天」ステージに2日目の夜に登場。たくさんのファンが夜空に掲げる大きなフラッグが風になびき、泳ぐ魚のよう。照明を浴びてキラキラ輝くシャボン玉は水の泡のようで、まるで海中を魚が泳いでいるようでした。特別な演出を準備してると聞いていたのですが、曲間のMCの代わりにスクリーンに3匹の豚がお喋りするアニメーションが流れました。かつてライブキッズだった大人の豚たち。会場からは笑いも起きていました。ただ、言葉がわからなくても、そこに込められた思いは、しっかりと伝わるアニメーション。台湾で台湾語でロックするバンドとして、自分たちの暮らす島への思いをはっきりと表明して、団結しようと語りかけると大歓声が起きていました。今年結成20周年という彼らとそのファンたちの熱気に、まずは態度で示すことの尊さを思い知らされました。





前回のレポート(※1)で少し触れた、鄭宜農Enno Chengは昨年と同じ「女神龍」ステージに登場。昨年よりも、エレクトリックなサウンドになっていて、ソリッドでカッコよかったです。拍謝少年 Sorry Youthの最新アルバムにも参加しているんですが、今回のステージのムードがあの曲のサウンドに詰まっている気がします。少しお話を伺うことができたのですが、これからも台湾語にこだわって歌っていきたいそうです。今、言葉にとても関心があるそうで、韓国とのイ・ランとのコラボレーションも言葉をテーマにしたのだそう。Ennoの表現には全て意味があり、一つひとつ丁寧にお話ししてくださる方でした。じっくりインタビューしてみたいです。どこの国も地域もそれぞれに社会的課題があり、伝えていくべき伝統や文化がある。それぞれに苦しみ、今の「当たり前の毎日」を守りたいと思っている。ロックはそんな私たちの味方だ。人生とロックは共にある。真面目にそんなことも考えてしまうのです。


