連載「lit!」第144回:藤井 風、YOASOBI、Vaundy……新生活に届いた不安を吹き飛ばす最新曲5選

 新年度が始まり、自分の周りの環境が変化した人も多いのではないだろうか。慣れない生活に、つい気持ちが後ろ向きになってしまいがちなこの季節。不安や憂鬱な気分を吹き飛ばすには、音楽の力を借りるのもいいかもしれない。

 今回の「lit!」では、新しい感触をもたらし、時には「頑張ろう」と思えるように背中を押してくれるような楽曲を最新リリース作品のなかから5つをピックアップした。

藤井 風「真っ白」

 藤井 風は、3月14日にEP『真っ白 - EP』をリリース。2月28日に先行配信された「真っ白」に加え、同曲のアカペラ、インストゥルメンタル、ベーシストとして参加しているKOBY SHYによるリミックスと、4つのバージョンが収録されている。

藤井 風 - "真っ白" (Official Audio)

 オリジナル版は、ボサノバ風のリズムに鼻歌のようなメロディが重なるイントロ、美しいコーラスとともに響く藤井の穏やかな歌唱がどこまでも心地好い。「真っ白」という曲名通り、気持ちが浄化されるような一曲だ。〈先に進まなければゴールできぬゲームなのよ〉という節が印象的で、好きな人や場所から離れていくという意味では、卒業や進学といったシーンも想像させる。居心地好い場所からは離れづらくなるけれど、未知の世界に進むことでまた新しい自分に出会えるはず。そんなふうに、この春旅立ちを迎えた人たちにそっと勇気を与えてくれる楽曲でもあると思う。

YOASOBI「PLAYERS」

 YOASOBIが3月21日に配信リリースした「PLAYERS」は、PlayStation®の発売30周年記念プロジェクト「Project : MEMORY CARD」から生まれた一曲で、PlayStation®ユーザーから募集した“記憶を消してもう一度やりたいゲームのエピソード”をもとに制作された。ゲームで主人公が成長していくストーリーを軸とした歌詞に、ゲームの効果音を交えたキラキラとしたトラックは、かねてよりゲーム好きを公言してきたAyaseのゲーム愛が表れているようでもある。楽曲は、ikuraの明るいボーカルに加えて、随所にシンガロングパートを挟みつつにぎやかに進行。〈はじめから始められたら〉と嘆きながらも、今を受け入れて〈さあ つづきを行こう〉と帰結するこの曲は、ゲームのようにすべてをリセットできない現実で何かに躓いた時に私たちを鼓舞してくれるはずだ。〈もう一回 もう一回〉と――。

Vaundy「人生はミックスナッツの組み合わせ」

 3月26日配信リリースのVaundyの新曲は、さまざまな感情が入り混じる人生をミックスナッツに喩えたもの。最初こそ同じパターンの繰り返しかと思いきや、時折不安定な響きを鳴らしながら予想とは違うほうへ行くコード進行からも、単純にはいかない毎日が想像できる。一方で、跳ねるビートと、寂しさを紛らわすようなコミカルな歌詞がクセになり、聴いているうちに「生きていればこんな日もあるか」と肩の力が抜けてくるから不思議だ。ユニークなタイトルも興味をそそられるが、サビのいちばん盛り上がる部分で〈変な汁〉というインパクト大のワードを配置してくるセンスも絶妙である。

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