KIRINJI、映像と音響にこだわったスタジオライブをレポート ダイナミックさ増した『cherish』収録曲にも注目

KIRINJI、こだわりの音響によるスタジオライブ

 『cherish』収録の「shed blood!」で幕を開けたPart1は、ゲストとしていつか(Charisma.com)とYonYonが登場。各々「killer tune kills me」や「AIの逃避行」といったフィーチャリング曲でのパフォーマンスに加えて、「雑務」でいつかが、「「あの娘は誰?」とか言わせたい」でYonYonがサポート。演奏のダイナミックさに心動かされたのは、『11』(2014年)収録の「雲呑ガール」。ずっしりとファンキーなグルーブに軽快さを与える矢野によるパーカッションや、よりダイナミックに響く弓木のギターソロ、そしてゲストとしてPart1・Part2双方に参加したMELRAWのサックスソロがあわさって、ひとつのハイライトとなっていたように思う。

 Part2は『愛をあるだけ、すべて』収録の「時間がない」を皮切りにスタート。MELRAWが参加する以外はゲストの登場はなく、演奏のタイトさが感じられる瞬間が多かった。「非ゼロ和ゲーム」の余白の多い4つ打ちのグルーブは特に切れ味鋭く、息の合ったアンサンブルの魅力に満ちていた。「silver girl」ではオートチューン系のエフェクトを駆使したパフォーマンスも披露され、原曲よりも躍動感が増した演奏にチルな手触りが加わっていたのが興味深かった。また、この日は堀込の2005年のソロ作『Home Ground』から「パレードはなぜ急ぐ」が演奏され、ファンクやディスコ寄りのグルーブ中心のセットリストの中で、ブラジル音楽的な要素がアクセントに。MELRAWはサックスをフルートに持ち替え、スムースな演奏で参加。この曲に限らず、今回の配信イベントでもっとも重要な役割を果たしたのではないか、とさえ思う。

 2日間にわたった配信を締めくくったのは、ナンセンスな詞とは裏腹にアグレッシブなサウンドが繰り広げられる、『cherish』収録の「Pizza VS Hamburger」。演奏のテンションも高く、堀込のボーカルもダイナミックさを増していた。クライマックスを演出する大胆なエフェクト処理も手伝って、すっきりとした余韻を残す幕引きとなった。

 先述したように、プログラムの構成は「ライブらしさ」にこだわらないものだったが、見終えると不思議な充実感ーーライブを観たあとのそれにも似たようなーーに包まれた。特に、アーカイブでPart1・Part2を続けて観るとその気持ちは強まる。そして、「やっぱり生でみたい!」という気持ちもうなぎのぼり。状況が改善し、またライブ音楽を楽しめる日が早く来ることを願うばかりだ。

■imdkm
1989年生まれ。山形県出身。ライター、批評家。ダンスミュージックを愛好し制作もする立場から、現代のポップミュージックについて考察する。著書に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019年)。ウェブサイト:imdkm.com

■セットリスト
『KIRINJI Studio Live Movie 2020』
・Part1
1. shed blood!
2. 雑務 
3. killer tune kills me
4. After the Party
5. 善人の反省 
6. 雲呑ガール
7. 「あの娘は誰?」とか言わせたい
8. AIの逃避行 

・Part2 
1. 時間がない
2. 休日の過ごし方
3. 新緑の巨人
4. 非ゼロ和ゲーム
5. Almond Eyes
6. silver girl
7. パレードはなぜ急ぐ
8. Pizza VS Hamburger

■配信情報
・券種
視聴券:¥2,000(税込)
グッズ付き視聴券:¥3,500(税込・送料込)
※7月31日(金)22時00分まで購入可。
※視聴券をお持ちの方は7月31日(金)23時59分までアーカイブ視聴可。

・チケット購入はこちら↓
Part1
Part2

KIRINJI公式HP

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