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アーティストが語る“ミュージックヒストリー” 第二十二回:JQ(Nulbarich)

N*E*R*D、Nas、Stetsasonic……Nulbarich JQが明かすルーツとなったヒップホップソング

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 隔週木曜日の20時~21時にInterFM897でオンエアされているラジオ番組『KKBOX presents 897 Selectors』(以下、『897 Selectors』)。一夜限りのゲストが登場し、その人の音楽のバックボーンや、100年後にも受け継いでいきたい音楽を紹介する同番組では、ゲストがセレクションし、放送した楽曲をプレイリスト化。定額制音楽サービスKKBOXでも試聴できるという、ラジオと音楽ストリーミングサービスの新たな関係を提示していく。3月1日の放送には、NulbarichのJQが登場。“自身が影響を受けた音楽”と“100年後に残したい音楽”を紹介する。今回はそのプレイリストから彼の音楽性を掘り下げるべく、同回の収録現場に立ち会った模様の一部をレポートしたい。

The Fugees「Killing Me Softly」

 JQがまず自身のルーツとして挙げたのは、The Fugees「Killing Me Softly」(アルバム『The Score』収録)。ロバータ・フラックの歌で大ヒットしたナンバーをヒップホップ風にアレンジし、シングルヒットした名曲だ。JQは小学生時代から吹奏楽やクラシック、バンドサウンドを嗜んでいたりと充実した経歴を持つアーティストだが、この曲に出会ったのはクラブでのこと。ヒップホップが流れるパーティーに行った際、楽曲が流れ始め、「ドラムだけでアカペラが流れていて、サビが来たと思ったらベースだけでびっくりしたけど、そのフロアの人たちはみんな知っている曲として踊り狂っていた」という体験を経て、「こんな音楽もあるんだ」と自覚したという。

N*E*R*D「Sooner Or Later」

 続いて、「10代の節目となった曲」として挙げたのが、N*E*R*D「Sooner Or Later」(アルバム『Seeing Sounds』収録)とジョン・メイヤー「Waiting On The World To Change」(アルバム『Continuum』収録)。いずれも2000年代後半の楽曲だが、N*E*R*D「Sooner Or Later」に関しては、アルバム『Seeing Sounds』が大好きだったという。当時トラックメイキングに夢中になっていたJQは、ファレル・ウィリアムスを追いかけるようになり、次第にティンバランドやウィル・アイ・アムなど、プロデューサー目線で音楽を作ることの楽しさに目覚めたという。そのなかでもN*E*R*Dの同作は、JQ曰く「ミックスに関しても良い意味で時代にマッチしていなくて新しかった」そうで、最初は「こんなペラペラなの? と思ったけど、しっかり聴くと細かく作り込まれていた」と、アルバムの完成度の高さに脱帽した過去を語ってくれた。

ジョン・メイヤー「Waiting On The World To Change」

 また、ジョン・メイヤー「Waiting On The World To Change」は、これまでリスナーとしてはヒップホップやR&Bしか聴いてこなかった彼が、いわゆるアイランドミュージックやチル系の音楽を好きになったきっかけの一曲だという。彼の好みは2番が終わった後のブリッジで、「スケール感からずれるような場面転換が斬新」とのこと。実際にこの作品はR&B〜ヒップホップの流れを組むNulbarichの音楽において、キャッチーさの中にある不思議なメロディや心地よいギターサウンド、スケールアウトすることで逆に気持ち良さを生むボーカルなど、顕著に影響を与えているように思う。最新作『H.O.T』でも「Almost There」あたりの楽曲がそれに当てはまるだろうか。

Nas「N.Y.State Of Mind」Stetsasonic「Talkin’ All That Jazz」

 続いて、「音楽を始めてから影響を受けた曲」として挙げたのが、Nas「N.Y.State Of Mind」(アルバム『Illmatic』収録)。このあたりのヒップホップが彼の音楽的な基礎を作り上げているそうで、先輩たちにも「ヒップホップはジャンルじゃなくて歴史や文化だ、何が好きとかじゃなくてこれが正しいだから」と言われ、レコードが擦り切れるまで聴いたというエピソードを話してくれた。Nulbarichの音楽は、メロディや拍子などにいわゆる日本人的なクセが少ないことが特徴の一つとして挙げられる。これらのヒップホップ的なリズムやフロウの元になったのが先の体験だとすると、非常に納得がいく。

 もう1曲はStetsasonic「Talkin’ All That Jazz」(アルバム『In Full Gear』収録)。DJを趣味でやっていたJQは、お金を貯めてDJ使いのなかでも「名盤」といわれる高価なレコードを買うことを目標にしており、そのなかでも初めて自分のお金で買った高いレコードが同曲だったという。Nulbarichはサンプリングをしたり、客演を迎えたりといったヒップホップ的なアプローチこそ少ないが、これらのサンプリング的な感覚は非常に彼らの音楽性を表しているともいえる。『H.O.T』を通して聴くと、複数のジャンルからの影響を如実に感じるし、それらがばらつきもなくしっかりまとまった作品になっているのは、感覚の鋭さとプロデューサー・トラックメイカー的な視野の広さが大いに影響しているのだろう。


 なお、番組ではほかにも、JQの“100年後に残したい音楽”として、グラミーを総なめにした名作からの一曲や、バンド×HIPHOPの歴史に残る名曲についてのトークや、新アルバム『H.O.T』の紹介も行われた。

 期待の新星として、今年以降のポップスを変革させる可能性を持つNulbarich。この機会に、今回の放送とこれらの楽曲とプレイリストから、今一度彼らの音楽を紐解いてみてほしい。

(文=中村拓海)

■番組情報
KKBOX presents『897 Selectors』
DJ:野村雅夫 
放送日:毎月第一・第三週木曜20:00からInterFM897でオンエア
番組ホームページ

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