アーティストが語る“ミュージックヒストリー” 第十四回:夜の本気ダンス
夜の本気ダンス・米田貴紀が明かす、“ロック”と“ファンク”に目覚めたルーツミュージック
隔週木曜日の20時~21時にInterFM897でオンエアされているラジオ番組『KKBOX presents 897 Selectors』(以下、『897 Selectors』)。一夜限りのゲストが登場し、その人の音楽のバックボーンや、100年後にも受け継いでいきたい音楽を紹介する同番組では、ゲストがセレクションし、放送した楽曲をプレイリスト化。定額制音楽サービスKKBOXでも試聴できるという、ラジオと音楽ストリーミングサービスの新たな関係を提示していく。10月19日の放送には、夜の本気ダンスから米田貴紀(Vo/Gt)が登場。“自身が影響を受けた音楽”と“100年後に残したい音楽”を紹介する。今回はそのプレイリストから彼らの音楽性を掘り下げるべく、同回の収録現場に立ち会った模様の一部をレポートしたい。
米田がまず、自身のルーツとして挙げたのは、ASIAN KUNG-FU GENERATION「遥か彼方」(アルバム『崩壊アンプリファー』収録)。現在27歳の米田は、中学生3年生のときに所属していたバスケットボール部を引退したことを機に、音楽を意識して聴くようになったという。その時に向かったCDショップで『崩壊アンプリファー』をジャケ買いしたことからこの曲に出会ったようだが、ロックを聴いてこなかった米田にとっては「最初は理解できなかった音」だったそう。しかし、繰り返し聴いているうちに気に入り、ロック=カッコいいという価値観に変わり、現在のようなラウドなダンスロックを志向するようになったという意味では、米田を現在の道に導いた作品・楽曲といっていい。
その1年後に出会った楽曲として、米田が2曲目にピックアップしたのは、Red Hot Chili Peppers「Can’t Stop」(アルバム『By The Way』収録)。彼はバンドを題材にした漫画『BECK』にハマり、洋楽の知識を得るなかでRed Hot Chili Peppers「Can’t Stop」のMVを見て、「こんなカッコいいものがあるんか!」と雷に打たれたような衝撃が走ったという。彼らの奏でるダンスロックは複雑なものが多く、いわゆるミクスチャー的な手法で作られた物も多い。そういった意味では、この頃の原体験がサウンドに与えている影響は大きいのだろう。
そんな米田は、「音楽を始めてから影響を与えられた曲」として岡村靖幸の「だいすき」(アルバム『靖幸』収録)をピックアップ。ファンク・ダンスミュージックを聴いてこなかった彼は、夜の本気ダンスに途中加入したタイミングでこの曲を見つけ、特にそのリズム感や歌詞に強い影響を受けたそう。米田が「リズムを重視している歌詞が多く、日本語でこれをやっている人が稀だと思った」と話すように、ダンスミュージックに乗せづらいとされている日本語を、独特の言語感覚で乗りこなした岡村。そんな彼をピックアップしたことで、夜の本気ダンスが歌う個性的な日本語詞のルーツを垣間見た気がした。
次に、同じテーマで米田が選んだのはSTAn「THE SONG」(アルバム『STAN』収録)。惜しくも2011年に活動を終えてしまったSTAnだが、米田いわく「すべてにおいてカッコいい」バンド。彼はバンドのグルーヴ感や演奏面のほか、STAnの歌詞にもシンパシーを感じたようで、「歌詞が全部ひねくれているけど共感できる。自分の気持ちを代弁してくれているような、ありそうでないところを全部言ってくれている」と感じ、大学生のときにはひたすら聴きこんでいたという。バンドとしてポップシーンに足を伸ばしながらも、どこか斜に構えた夜の本気ダンスのスタンスは、こういったルーツに紐づくものなのかもしれない。
なお、番組ではほかにも、米田の“100年後に残したい音楽”として、映画をきっかけに出会ったら60年代の名曲や、ロック好きの美容師に教えてもらったパンクの名曲などが紹介されたほか、10月11日にリリースした新アルバム『INTELLIGENCE』についてのトークも行われた。
ロックシーンの若手勢において、まさにいまブレイクへの階段を駆け上がっている途中といえる夜の本気ダンス。今回の放送を機に、フロントマン・米田のルーツから、彼らの音楽に今一度興味を持ってみてはどうだろうか。
(文=中村拓海)
■番組情報
KKBOX presents『897 Selectors』
DJ:野村雅夫
放送日:毎月第一・第三週木曜20:00からInterFM897でオンエア
番組ホームページ
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