大塚 愛が明かす、デビュー以降の“声の変化”と転機になった洋楽ソング

大塚 愛、デビュー以降の“声の変化”を語る

 4月から隔週木曜日の20時~21時に時間を移し、InterFM897でオンエアがスタートするラジオ番組『KKBOX presents 897 Selectors』(以下、『897 Selectors』)。一夜限りのゲストが登場し、その人の音楽のバックボーンや、100年後にも受け継いでいきたい音楽を紹介する同番組では、ゲストがセレクションし、放送した楽曲をプレイリスト化。定額制音楽サービスKKBOXでも試聴できるという、ラジオと音楽ストリーミングサービスの新たな関係を提示していく。4月20日の放送には、新アルバム『LOVE HONEY』をリリースしたばかりの大塚 愛が登場し、それぞれが“自身が影響を受けた音楽”と“100年後に残したい音楽”を紹介する。今回はそのプレイリストから彼女の音楽性を掘り下げるべく、同回の収録現場に立ち会った模様の一部をレポートしたい。

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 まず、大塚がセレクトしたのは、自身のルーツとなっている楽曲。彼女は「小学生の時の思い出の曲」と前置きし、KAN「愛は勝つ」(1990年リリース・アルバム『野球選手が夢だった。』収録)を挙げた。この曲名は彼女の名前である「愛」が勝つというものであり、その言葉に励まされた大塚は「給食の時間、いつも食べるのが遅くて教室に残されていたけど、この曲がかかった瞬間に大嫌いなレーズンパンを掲げたりした」とコメント。「愛は勝つ」は日本のポップス史に残る名曲だが、複雑な転調がいくつも使われていたり、ラストのサビでは全音が上がるという仕掛けも施された、マニアックさとキャッチーさが同居する一曲だ。大塚 愛の曲といえば、デビュー当初からキャッチーなものが多かった印象だが、アルバム曲などでは、マニアックな工夫も凝らされつつ、ポップスとしての気持ち良さを持つ楽曲が次第に増えている。そんな彼女の原体験に、この楽曲があったというのは納得のいくエピソードだ。

 もう一つルーツとして挙げたのは、美空ひばりの「真赤な太陽」(1967年リリース)。小さい頃に家族で行ったカラオケで出会った一曲で、それ以来彼女の十八番でもあったという。この曲について、彼女は「これを歌うと、自分が強くなれる。“かかってこいやモード”になるんです」と話しており、「愛は勝つ」と共通して“自分を強くしてくれる、力を与えてくれる楽曲”が大塚 愛のルーツにあることがわかった。

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 番組中盤では、「音楽を始めてから影響を受けた曲」についてトークが展開された。大塚はデビュー以降、楽曲に合わせて声を変えるというスタイルで活動しており、彼女いわく「自分の声を大事にできなかった」期間が5年ほどあったという。そして、5年が経過し「自分の声を活かせる楽曲作りをしよう」と思った際にThe Cardigansの「Carnival」に出会ったそうだ。彼女は番組のなかで「5年」という月日を挙げたが、明確にその変化を感じるのが5thアルバム『LOVE LETTER』(2008年リリース)だ。「J-POPといえば声を張ったり強めに歌うというムードがある中でこの曲に出会って、ニーナ・パーションのグルーヴのなかでやんわり歌う声が新鮮で衝撃を受けた。このやり方なら自分の声も活かせるんじゃないかと思ったし、サビは盛り上がって強めに歌うという価値観をぶっ壊してくれた」と語ったように、『LOVE LETTER』では鍵盤の弾き語りをバックに柔らかな歌声を届ける「LOVE LETTER」が1曲目に収められている。

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 最後に彼女が影響を受けた曲として挙げたのは、カイリー・ミノーグの「Cant’ Get You Out of My Head」(2001年リリース『Fever』収録)だ。大塚はこの曲について「ノリノリとセクシーが一体化する感じ。妖しいというか。そんな楽曲を自分でも作ってみたいと思った」とコメントしている。先ほど挙げた『LOVE LETTER』もそうだが、少し間を空けてリリースした『LOVE FANTASTIC』や『LOVE TRiCKY』といったアルバムは、より妖しさや大人っぽさを纏った、セクシーなアルバムに仕上がっているし、『LOVE TRiCKY』ではSTUDIO APARTMENTの阿部登と共作するなど、よりサウンドを聴かせることに特化した作品を作ってきた。大塚 愛の楽曲や声はキャリアを追うごとに変化してきたが、その根本にこれらの曲があったというのは驚きだ。

 なお、番組では彼女が語る“100年後に残したい音楽”についてのトークも行なわれた。こちらでは最新アルバム『LOVE HONEY』にも繋がる楽曲の話をたっぷりと語っている。

(文=中村拓海)

 

■番組情報
KKBOX presents『897 Selectors』
DJ:野村雅夫 
放送日:毎月第一・第三週木曜20:00からInterFM897でオンエア
次回ゲスト:大塚 愛(4月20日放送)
番組ホームページ

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