TRACK15、多くの人の心を動かす楽曲を目指して 2ndミニアルバム『season』バラードを武器に遂げたさらなる進化

大阪発の4人組ロックバンド、TRACK15が2ndミニアルバム『season』をリリースした。昨年3月に1stミニアルバム『bouquet』を発表して以降、大型フェスへの出演、東京での初ワンマンを成功させるなど、バンドとしてのスケールアップを続けてきた彼ら。Billboard JAPAN「Heatseekers Songs」でTOP10入りした「千年計画」(MBSドラマ特区『初めましてこんにちは、離婚してください』エンディング主題歌)を含む本作は、「どの部分に関してもステップアップできたと思っています」(蓮、Vo/Gt)という充実作となった。蓮が描き出す映像的かつエモーショナルな歌の世界、そして、鍵盤やストリングスを取り入れることでさらに立体的になったバンドサウンド。さらなる進化を遂げた本作について、メンバー4人に聞いた。(森朋之)
「言葉を発する・歌うのは自分だけなんですけど、やっぱり4人で届けたい」

——前作『bouquet』以来、約1年ぶりとなる新作ミニアルバム『season』がリリースされました。まずはこの1年の活動の手ごたえを教えてもらえますか?
蓮:初めてのことをたくさん経験して、ドキドキするような新鮮な体験が多かったですね。東京の初ワンマン(11月21日渋谷WWW X)、めっちゃ緊張しました。敵がいっぱいいる感じがして。
高橋凜(Ba):味方しかおらんやろ(笑)。
蓮:そうなんやけど、どうしても思っちゃうねん(笑)。
寺田航起(Gt):(笑)。この1年は大きい場所でライブをやらせていただいたり、新曲もずっと作っていて。めちゃくちゃ忙しくなって、大変は大変なんですけど、けっこう楽しくやれてます。
TRACK15、東京での初ワンマンライブをレポート 演奏と観客の合唱が響き合った満員のWWW X
大阪発の4人組ロックバンド・TRACK15が東京での初ワンマンライブ『TRACK15 ONE MAN LIVE』を渋谷WWW X…高橋:ライブやリリースもそうですけど、いつも“次”があって。先の目標が提示されているので、そこに向かって進んできたというか。第2章の始まりという感じになってきましたね。
——バンドの雰囲気も変わってきた?
前田夕日(Dr):前よりも話し合いをやるようになったんじゃない?
蓮:うん。
前田:去年の8月2日に初めての自主企画ライブ『YORU FES』をOSAKA MUSEでやらせてもらったんですけど、そのイベントの前にメンバー同士で真剣な熱い話し合いがあって。それ以降はバンド内で「こうしたい、ああしたい」「こうしたほうがいいんじゃないか」という作戦会議が増えましたね。
高橋:フワッとした何でもない話はずっとしてたんですけど、腹を割って話すことがあまりなかったんですよね。8月のイベントの前に、久しぶりにしっかり話すタイミングがあって。1時間半くらい喋ってた?
寺田:そうだね。
蓮:同じ方向を向けたというか。言葉を発する、歌うのは自分だけなんですけど、やっぱり4人で届けたいので。意思がつながっているのはすごくうれしいです。
——ライブについても話し合ってます?
蓮:はい。ライブは、4人のありのままを出せるのがいいのかなと思っていて。楽曲がいちばん素直に伝わる形を目指しています。まだまだですけどね。
——曲作りはどうですか?
蓮:ちょっと前まで、何をやっても上手くいかなかった時期があったんです。でも、何がきっかけかわからないけど、その状態を抜けてからは「何でもやれる」というタームになってます。
——極端ですね(笑)。
蓮:曲が降りてくるみたいなことはなくて、「よし、やろう」って環境を整えて、ギターを構えて作り始めるんですよ。メンタルを保つというか、自分のコントロールが大事だなって最近気づきました。

——では、新作『season』について聞かせてください。前作『bouquet』との違いがあるとすれば、どんなところだと思いますか?
蓮:どの部分に関してもステップアップできたと思っています。曲作りやアレンジもそうだし、それぞれの音やフレーズ、演奏のタッチや歌のブレスなどにもしっかりこだわったし、4人でできることを全部やって、曲に詰めて伝えることができたミニアルバムだなと。
寺田:今回はウワモノ(鍵盤、ストリングスなど)も増えたんですけど、それを踏まえてギターのフレーズを練って。すごく勉強になったし、アレンジや音作りに関して、新しい考えが追加された感じがありました。これからの新曲にも活かせると思うし、ターニングポイントなったミニアルバムですね。
高橋:ピアノやストリングスが入ることで、より自由度が高くなった感じがあります。アルバムの中の1曲ではなくて、1曲1曲が立っているというか。以前からそうしたいと思ってやってきたんだけど、それをはっきり形にできたのかなと。
——アレンジャーには谷地学さん、小山寿さん、竹縄航太さんが参加。
蓮:曲を作って、自分たちでアレンジをしている段階から鍵盤やストリングスのイメージが浮かんだりするんですけど、自分たちでは演奏できないので。そこは技術をお借りしようかなと。自分たちの曲をより深く表現するにあたって、必要なことだと思うので。
前田:アレンジもそうですけど、蓮くんの歌詞もより一層、情景や感情が伝わりやすくなったと思います。今までよりも書きたいことが書けているというか。
蓮:素直に自分を出せている感じはありますね。当たり前ですけど、作り物にはあまり心が揺れないと思うんですよ。その人の素の状態だったり、本当に思っていることを出すのがいちばん伝わる方法だと思ってるので。それを上手く表現できた気がします。恥ずかしいことも含め、隠さず曲にできたらなと。
——素の感情を曲に込めるときに、「これを歌うのか」とつらくなることはない?
蓮:ありますね。あるんだけど、そこは自分の許せる範囲で形にするというか。ちゃんと自分に似合う言葉を選んでいるので。
——なるほど。ミニアルバム『season』の1曲目はリードトラック「脇役スター」。この曲をリードにしたのはどうしてなんですか?
蓮:いつもそうなんですけど、どの曲もリードだと思って作ってるんですよ。リリースのタイミングだったり、みなさんと話をするなかで「脇役スター」がリード曲という形になったんですが、ほかの曲も全然負けてないです。
——すべてが主役だと。「脇役スター」はどんな曲想から制作が始まったんでしょう?
蓮:これは曲名からですね。“脇役”と“スター”は対照的だし、あまりつながらないと思うんですよ。でも、脇役の中にも輝いている人はいるし、影の部分に焦点が当たるような曲を書きたくて。僕は物事を俯瞰するクセがあって、いちばん目立ってる人や主人公の横にいる人を見てたりするんですよ。そういう意識は普段からあるかもしれないです。
——それがソングライティングの個性に反映されているのかも。バンドのボーカリストは目立ちますけどね(笑)。
蓮:あまり目立ちたくないんです。凜は目立ちたがりですけど。
高橋:自分がいちばんかわいいです(笑)。
蓮:……そんなキャラやった(笑)? 僕は自分がワーワー言われるより、メンバーに注目が集まったほうがいいです。
前田:僕もそうですね(笑)。
寺田:そうなんや。
——寺田さん、ステージでも目立ちますよね。MCはしないし、寡黙にギターを弾いてるんだけど、余計に目がいくというか。
寺田:1人くらい喋らなくてもいいかなって。そのことで逆に焦点が合ってたとしたら、いちばんラクな役ですね(笑)。
聴き手の想像力を掻き立てるTRACK15の楽曲 メンバーのお気に入りは?

——寺田さん、高橋さん、前田さんにとって、特に印象的な曲、思い入れのある曲は?
寺田:自分は「告白」ですね。この曲にもストリングスが入ってるんですけど、自分が弾きたいリードギターのフレーズを入れられたし、いい感じでやり切れたので。歌詞も好きです。最初は自信なさげなんだけど、最後には〈きっと私じゃなきゃダメなの〉という気持ちになっていて。ちょっとワガママっぽい感じもいいなって思います。
——主人公の女の子像が魅力的だと。
寺田:そこはどちらにも取れると思います、男でも女でも。
蓮:いつもそうなんですけど、男性でも女性でも、どちらにも取れるように書いているんです。もちろんどっちかに寄ることはあるんだけど、聴いた人が置き換えて聴けるように意識していて。より多くの人に共感してほしいんですよね、やっぱり。
高橋:僕は「君ノーベル」がお気に入りですね。ピアノがガッツリ入っていて、かなりポップなサウンドになっていて。サビもスッと入ってくるし、歌詞の幸福な感じもいいですよね。〈全部ってなんなの!?って怒るでしょ、ねぇ?〉とか。
——〈僕〉の〈君の好きなとこなんて全部になるんだけど、〉に対して、〈君〉が怒るっていう。
高橋:女の子像がはっきり見えるのがいいなって。こういう子、楽しそう。
蓮:感想がうっすいな、おまえ(笑)。
寺田:ハハハハハ。
前田:(笑)。どの曲も好きなんですけど、ミニアルバム全体を見たときに「サンブンノイチ」だけはウワモノが入ってなくて、バンドの音だけで録ってるんですよ。1曲だけ雰囲気がガラッと違うし、歌詞やメロディにも蓮くんの良い部分、好きな部分がモリモリで。めっちゃ気に入ってますね。主人公が好きな人を追いかけているところだったり、全然余裕がないところも面白くて。リズムパターンの展開を多くして、余裕がないところを表現しているんですけど、演奏してて楽しいです。
——歌詞の内容がドラムに影響しているんですね。
前田:そうですね。最初は弾き語りで送ってもらうことが多いんですけど、それを聴きながらドラムパターンを考えてます。
——蓮さんから「こういう演奏にして」と伝えることもあるんですか?
蓮:こちらからは言わないですね。「こうしてほしい」というのは頭の中にあるんですけど、それを伝えたら、僕の曲になっちゃうので。メンバーのイメージで弾いてもらったほうが、より4人の楽曲になると思うし、最初は任せるようにしてます。
高橋:最初はリズム隊の二人で気持ちいいところを探っていくんですけど、フレーズを弾いたり、オチサビの部分については、歌詞を見て決めることが多いですね。
寺田:デモのときから「メロディと歌詞がすごく合致してるな」と思うことも多いので、その中でいちばん耳に入ってきたキーワードをイメージしてるかもしれないですね。「この曲は、このワード」というのを意識しながらギターを入れていくというか。
ーー今回のミニアルバムには、夏ソングの「青い夏」、ウインターバラードの「ふゆのうた」も収録されています。
蓮:タイトルが『season』ですからね。「1年通して、いつでもTRACK15の音楽が聴いてくれる人の近くにいれたらな」という思いもありました。「青い夏」は清涼飲料水のCMソングのつもりで書いたんですけど、めっちゃ好きですね。特にAメロの最後の〈この恋は戦慄迷宮ジレンマです〉という歌詞は自分でもすごいなって(笑)。夏じゃないですか、“戦慄迷宮”って。
高橋:富士急ハイランドのお化け屋敷やな。
蓮:そうそう(笑)。あと「青い夏」というタイトルなのに、歌い出しで〈赤〉(〈ふいに見せた横顔が綺麗で /僕はまたちょっと赤くなる〉)が先に来るのも秀逸だなって自分で思ってます(笑)。
——そういうのって、計算して書いてるんですか?
蓮:たまたまですね……いや、考えてるか。曲を作ってるときの記憶があんまりないんですよ。なので後から聴いて自分で感動できるっていう。ふだんは自分で自分のことを「すごい」って言えるタイプでは全然ないんですけど。曲に関しては「いい曲だな」って素直に思えます。曲を書いているときは、意識が完全にそっちに取られちゃってるんでしょうね。
——「ふゆのうた」はTRACK15の王道のウィンターバラードなのかなと。
高橋:バラードは何曲も作ってきてるんですけど、どんどんクオリティが上がってる感じがあって。「ふゆのうた」は誰が聴いても「うわ!」ってなってくれるんじゃないかな。
——大きい会場が似合いそうですよね。蓮さんは曲を書くとき、ライブでやるとどうなるかも意識しますか?
蓮:アップテンポやミディアムの曲はお客さんの反応を考えることがありますけど、バラードは好き放題というか、自分が表現したいものを優先してますね。「ふゆのうた」もそうだったと思います。





















