現役大学生シンガーソングライター・れんの素顔に迫る 運が切り開いた音楽への道、初ドラマOPテーマに至るまで

話題のシンガーソングライター・れんが4月17日にシングル「淡色の幸せ」をリリースし、トイズファクトリーからメジャーデビューを果たした。れんは2003年生まれで、TikTokを中心としたSNSを軸に活動をスタート。デビュー前から動画総視聴再生回数1億回を突破するなど、10代~20代のリスナーから圧倒的な支持を獲得してきた。2021年9月に初のオリジナル曲「嫌いになれない」をリリース。続いて発売された「最低」「空っぽ」が各種ストリーミングサービスでバイラルヒットし、プレイリストにピックアップされるようになる。コンスタントに作品をリリースし、毎作品その音楽性の豊かさでリスナーを驚かせ、昨年は初の全国ツアーを成功させた。今年も3月、4月に上海・杭州・ソウル・台北を巡る海外ツアーを開催中で、海外ファンからも熱い視線を集めている。
ニューシングル「淡色の幸せ」は、江口のりこ主演ドラマ『ソロ活女子のススメ5』(テレビ東京系)のオープニングテーマに起用。れんがドラマに楽曲を書き下ろしたのはこれが初めてだ。れんにインタビューし、この作品について、さらにメジャーデビューを決めた理由や、楽曲制作の方法など、新時代の表現者の素顔に迫った。(田中久勝)
12年のサッカー生活から音楽の道へ 現役大学生でメジャーデビュー

――まずはメジャーデビューを決めた理由から教えてください。
れん:レーベルで担当していただいている方が、全然面識がない時から、その方のプレイリストに僕の曲を入れてくださっていたことを認識していて。それで実際にお会いして色々お話を聞いていく中で、レーベルに入って誰かとやるとしたらこの人しかいないなと思い、決めました。
――れんさんがメジャーデビューに際して、応援してくれているファンに報告した直筆のメッセージに「物心がついてからの12年間、サッカーしかしていなかった僕が、音楽の世界でメジャーデビューできるとは正直想像もしていませんでした」という一文があります。本気で取り組んでいたサッカーから音楽へ、そのシフトチェンジはスムーズだったんですか?
この度僕は、トイズファクトリーよりメジャーデビューさせて頂きます。
この3年半というアーティスト活動を振り返るといつもあなたが傍にいてくれました。これからも音楽という形で日常に少しでも彩りと少しの幸せを届けられたらなと思います😌
これからも未永くよろしくね。 pic.twitter.com/o8Z89K3qnN— れん (@rendesug) March 25, 2025
れん:自分でもびっくりするほどすんなりできました。決めてからはすごく早かったです。12年間本気でやってきたものをすぐに捨てて、音楽を始めました。
――その大きな決断をすぐにできたのがすごいと思います。やりたいことが見つからない人も多いと思うし、高校時代に将来、未来を見つけられたのは大きいですね。
れん:普通躊躇するし、なかなかできないですよね。でも僕の中では“今まで”ということがあまり関係なくて、やりたいものをやった方がいいという気持ちに従いました。サッカー推薦で入った高校だったのにサッカーを辞めてしまいましたが、校長先生が本当にいい方で「ここまでよく頑張ってきてくれたから」と受け止めてくださったのはありがたかったです。今では「あの時決断してよかった」と思えるけど、その時は未来が見えていたわけでも、未来を見据えて「こうなっていたらいいな」と思っていたわけでもなく、本気で「今やりたいのは音楽だ」っていう確信だけで決めてしまったので。後先を考えずに動いた結果が今です。運がよかったと思います。
――運も実力のうちといいますが、エンタメシーンで成功していく人にとって運は絶対大事だと思います。
れん:同感です。ほぼ運ですよ、きっと。
――ずっとサッカーをやってきて、運がいいなと思ったことはありました?
れん:そう言われるとサッカーをやっている時は、逆に運が悪かったと思います(笑)。当時Jリーグのチームのジュニアユースに所属していて、ある時世代別のナショナルチームでも活動できるチャンスがあったんです。でもスケジュールが被って所属チームのほうを優先せざるを得なくなったり、ついてないことが色々あった気がします。
――高2でギターを始めたということですが、それまでも例えば友達とカラオケに行ったら声がいい、歌がうまいなど言われていたんですか?
れん:幼少期から歌うことが好きで、ずっと歌っていたみたいです。友達やサッカーのコーチからも「歌上手いね」って言われていました。家にもカラオケ機があって、親が歌うJ-POPをずっと聴いてきたし、自分でも歌っていました。

――れんさんの音楽を聴いていると、若い世代だけではなく、我々のような上の世代にもそのメロディがスッと入ってくるのはそういう環境の元で育って、J-POPのメロディが知らず知らずのうちに、れんさんから出てくる音楽に刷り込まれていたのかもしれませんね。
れん:それはめちゃくちゃ嬉しいです。世代関係なく自分の音楽をいいなって思ってくれたほうがいいじゃないですか。僕の目指す音楽のスタイルはまさにそこで、幅広い世代の人に刺さってほしいし、気に入ってほしいなって思って作っています。
――曲を書くとき、SNSでバズらせることを頭に置いて作ったりすることはありますか?
れん:それはないです。純粋に書きたい曲を書く。でもSNSというよりはサブスクでの伸びは確かに気にしています。アーティストである以上そこを気にしなくなったら、ただのエゴになってしまうのでそこは意識しつつ、SNSでのバズりは特に意識していないですね。
――この約3年半で、コンスタントに楽曲を発表してきていると思いますが、曲作りに関しては量産型ですか?
れん:スタッフさんからは「ゴールと一緒で量産型。サッカー選手時代は点取り屋だったからかな」と言われたことがあります(笑)。でも曲ができずに困るとか、スランプになるみたいなことは確かにあまりないです。メロディはいくらでも出てくるけど、歌詞に関しては自然に出てくるものは限りがあると思います。何かテーマに沿って書くほうが得意かもしれません。
――一曲になっていなくても、メロディや言葉の欠片みたいなものはたくさんストックがあるんですか?
れん:ワンフレーズできたらそれをボイスメモに残しているので、千単位であると思います。ずっと歌い続けることができたらそれが幸せなので、どんどん曲を書いています。
――高校2年の時にギターを買って、3カ月で独学で習得したとお聞きしました。初めて作った曲「嫌いになれない」をSNSに投稿してバズッたことが、デビューのきっかけになったんですよね?
れん:そうです。初めて作詞・作曲をした曲が「嫌いになれない」で、あの曲は恋人に浮気された先輩を見ていて着想しました。その曲がたくさんの人に共感してもらえていると実感できて、やっぱり音楽って素晴らしい、この道に進もうって改めて思いました。
――曲を書くときはギターを爪弾きながら出てきたメロディを素直に紡いでいくのか、それともこういう感じの曲、例えばちょっとゆっくりめのテンポのラブソングを書こうとか、大きなテーマを決めてから曲作りに入るんですか?
れん:色々なケースがあります。「淡色の幸せ」は、適当にコードを弾いていたらAメロが出てきて、Bメロも速攻出てきて。でもCメロだけめっちゃ悩みました。どうしたらいいか20分くらい悩んで、でも出てきてくれました。
――悩んでも20分なんですね。
れん:どの曲も総制作時間は2~3時間だと思います。そんなに時間をかけないんですよね。「赤」(2022年)はたぶん30分くらいでできて、一発でフルでボイスメモに録って、それがほぼ完成形でした。
――感情が生々しく剥き出しになった、応援ソングですよね。
れん:「赤」みたいなケースは意外と多いです。洗濯物を干している時にメロディが流れてきて、急いでボイスメモに録ったり、寝起きでいいメロディを思いついたり、「よし作るぞ!」って向き合うより、比較的日常生活を送っている中で浮かんでくることが多いかもしれません。最悪だったのが、ある時寝る直前にめちゃくちゃいいメロディが浮かんで、眠いけど絶対録ろうって歌って、それで朝起きて聴いてみたら、まんま「GLAMOROUS SKY」(NANA starring MIKA NAKASHIMA)のメロディだったことがあって(笑)。眠いときはめちゃくちゃヤバい曲だと思ったのに、みんなが知っている大人気曲でした(笑)。