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"真っ赤なほっぺにネルシャツとメタルT"というもろグランジ少年なルックスでありながら、"アコギ片手にブルース・ハープ"(=フォーク)、でも"ラップ+ブレイクダンス"(=ヒップホップ)——といった「なんじゃコイツ!?」なスタイルでシーンに登場したベック(本名ベック・ハンセン)。94年のデビュー・シングル「ルーザー」の「オレは負け犬だー♪」というフレーズが、ニルヴァーナ「スメルズ・ライク・ティーン・スピリッツ」に取って代わり、全オルタナ・リスナーのアンセムとなったのである。
以降、2ndアルバム『オディレイ』(96年)がグラミー賞(アルバム・オブ・ザ・イヤー)を獲得し、グランジ以降のUSオルタナティヴ・シーンをメインストリームに留まらせた功績は天晴れ。これはフレキシブルな作曲センスと、どこか肩の力の抜けた佇まい、果てはクサイほどあからさまなエンターテインメント精神によるものであろう。
『メロウ・ゴールド』(94年)でのローファイ、『オディレイ』でのヒップホップ、『ミューテイションズ』(98年)でのフォーク/カントリー、『ミッドナイト・ヴァルチャーズ』(99年)でのファンク/ソウル/ディスコ、さらには実験音楽やブルースにまでその食指をのばし、ステージでは少年のような顔をしてギンギンのカントリールックで観客を煽動——見ていて、聴いていて、実に痛快な彼のポピュラリティは、アメリカという歴史に裏付けられたすべての音楽スタイルを非常に高次元なポップ理論で解釈・還元している点に帰結する。だからこそ、彼のキャッチーなメロディはキッズを魅了し、老練ですらある作風は全音楽リスナーを唸らせるものなのだ。
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