ジェフ・ベックも愛用したギターの名器「ギブソン・レスポール」漫画界で愛用しているキャラクターといえば?
イギリスのギタリスト、ジェフ・ベックが細菌性髄膜炎のため1月10日に亡くなった。78歳であった。ジェフ・ベックと言えば、日本ではエリック・クラプトン、ジミー・ペイジと並ぶ「世界3大ギタリスト」に数えられるギタリストである。
ジェフ・ベックの愛用ギターと言えば、フェンダーのストラトキャスター(以下、ストラト)だろう。ストラトを使用しているイメージが強く、ニュースで使用された写真も多くがストラトで演奏しているベックの写真になっているが、実はもう一つ重要なギターがある。
レスポール・カスタムとは異なるジェフ・ベック愛用のギター
それはギブソンのレスポールだ。一見すると『ぼっち・ざ・ろっく!』の後藤ひとり(ぼっちちゃん)の愛器と同じ、レスポール・カスタムのように見えるが、実はそうではない。1954年製のゴールドカラーのレスポールだったが、茶色がかったチョコレート・ブラウンに塗り直されたものだ。
このギターはジェフ・ベックが自ら買い求めたのち、ライブでもたびたび使用されシンボルになっている。2009年に、ギブソン・カスタム・ショップからはほぼ同一の仕様で、ベックの名前を関したモデルが発売されたこともある。
さて、ジェフ・ベックもそうであるが、エリック・クラプトンもストラトとレスポールを愛用している。音楽界と同様に、漫画界でもその人気を二分化しているといえるだろう。レスポールはこれまで数々の漫画でキャラクターたちの愛器として登場してきたが、代表的な例をいくつか挙げてみよう。
『ぼっち・ざ・ろっく!』ぼっちちゃん愛用の黒いギターはレスポール・カスタム
現在大ヒットしている音楽漫画といえば、『ぼっち・ざ・ろっく!』である。主人公のぼっちちゃんが愛用している黒いギターは、ギブソンのレスポール・カスタムだ。レスポールの最上位機種として1954年に発売されたのち、製造中止になった時期もあったが、1968年に復活して現在に至っている。ヘッドにダイヤモンドインレイがある点などが通常のレスポールと異なり、豪華な作りになっている。
レスポール・カスタムは「週刊少年マガジン」で連載されていた松本大治の『DESPERADO』のスーパーギタリスト、黒須の愛器でもある。ただし、黒須のレスポール・カスタムは全体が傷だらけという、非常にインパクトのあるルックスで登場する。なお、この漫画の主人公の椎名は音楽好きだが、その性格ゆえにクラスになじめずにいた。しかし、ギターを手にして黒須と出会い、ライブなどを通じて成長していく物語だ。どこか、『ぼっち・ざ・ろっく!』にも共通する要素がある(もっとも、ぼっちちゃんは陰キャすぎるのだが(笑))。
傷だらけのレスポールが登場する漫画は他にもある。ハロルド作石の『BECK』の南竜介が所有しているレスポールは、ボディーに弾痕がついているという、これまた強烈なルックスになっている。3巻の表紙には、主人公の田中幸雄(コユキ)がそのレスポールを持った絵が採用されている。レスポールは形状がシンプルでよく知られたギターだ。ゆえに、少しの細工を加えるだけで特別感が生まれるため、キャラの愛器として使いやすいのかもしれない。
ジェフ・ベックからも名づけられたハロルド作石『BECK』
なお、ハロルド作石によると、『BECK』のタイトルはジェフ・ベックとBeck(ベック)の2人のミュージシャンからとったとのことだ。
音楽好きの漫画家は数多い。梅澤春人が「週刊少年ジャンプ」で連載された『BOY』はヤンキー漫画でありつつ、梅澤の趣味を投影した音楽漫画でもある(主人公たちはバンドを組むし、作中にギブソンのフライングVなど数々のギターが登場する)。続いて連載された『無頼男―ブレーメン―』は、『BOY』で見られた喧嘩シーンやお色気要素も多いものの、より本格的な音楽漫画となった。作中では、主人公の春日露魅王とバンドを組むギタリストの火野麗児も、レスポールを愛用している。
レスポールのイメージを「かわいい」に変えた『けいおん!』
レスポールの「ロックでかっこいいギター」というイメージを、「かわいいギター」に変えたのは、京都アニメーションによってアニメ化されて大ヒットした『けいおん!』である。主人公の平沢唯は、「ギー太」と呼んで、チェリーサンバーストカラーのレスポールをかわいがった。同じ「きらら系」の漫画であっても、『ぼっち・ざ・ろっく!』のぼっちちゃんは、レスポールカスタムにかっこいいギターという思いを抱いているとされ、まったく異なるイメージで描かれている。
ギター漫画はアシスタント泣かせ?
ほかにも、レスポールが描かれている音楽漫画を探してみると、『晴れた日に少女はギターを』『君の歌声にキスを』などがある。レスポールはその完成されたルックスのおかげで、性別を問わず人気が高く、様々なジャンルの音楽を奏でるキャラクターに愛用されている。それは漫画界のみならず、リアルな音楽界でも同じだ。
余談であるが、ギターは漫画家もしくはアシスタント泣かせと言われる。何しろ形状が複雑で、見る角度によって表情が異なるため、描くのがかなり難しい。そのため、音楽漫画を連載する漫画家は、実際にギターを所有している例も少なくないそうだ。