山下智久の仕草に滲む“繊細な芝居力” 『ブルーモーメント』晴原と雲田に感じる確かな絆

『ブルーモーメント』山下智久の繊細な芝居力

 上司を亡くし、SDM(特別災害対策本部)への希望も失っていた晴原柑九朗(山下智久)が、仲間たちとの絆と使命を改めて自覚し再始動した『ブルーモーメント』(フジテレビ系)最終章。今回迎える最終話では、観測史上最強クラスの台風を目の当たりにした完全体のSDMの底力が試される……。

 晴原は今まで、テレビの天気予報コーナーで天気の豆知識をわかりやすく伝えながら、婚約者だった園部灯(本田翼)の意志を引き継ぎ、SDMの実現を目指してここまでやってきた。メガネと白衣姿で表向きは好印象なお兄さんだが、気象庁の研究官としての晴原は合理的な意見を述べ、笑顔を見せることは少ない。そんな晴原という役柄だからこそ、山下智久の“繊細な演技力”が垣間見える瞬間がある。

 まず、第9話でSDMにとって大きな障害となったのは、国家防災プロジェクトの工場で起きたガス爆発事故と、その責任者である特命担当大臣・園部肇一(舘ひろし)の裏金疑惑。このニュースを突いて、政界を動かそうとする新島元樹(伊藤英明)と鉢合わせした晴原は、「それはどうも」という一言しか発していない。そして「今後SDMは、園部大臣に代わって私が引き継ぎたいと思います」という新島の言葉に目を見開き、握手をした際には心なしか仰け反っているように見える。園部を信じているからこそ、新島を怪しく思う晴原の気持ちが、ほんの少しの仕草に滲み出ていると言える。

 さらに、約260万人を避難させなければいけないほどの大型台風が関東に迫ってくることに。この規模はSDMにとってかつてないほどの脅威だ。SDMが一都四県の指揮を執ることになり、晴原が各県の関係者に対して広域安全避難を選択して欲しいと説明を行うが、「予測が外れたとき、そのことを住民が受け止めきれますか?」と言われてしまう。そんな関係者たちに晴原は、席から立ち上がって力強く「従来のやり方では救える命も救えない」と訴えるが、やはりその場では理解を得られない。

 今までも、まだ起きていない自然災害について国民の理解を得ることの難しさが描かれてきたが、今回の規模はあまりにも大きいため躊躇するのも無理はないだろう。「園部が本部長であるSDMに世論が納得しないのでは?」という意見も述べられ、気象統括責任者としての想いが上手く伝わらない“もどかしさ”を見せつつも、晴原はすでに次はどう動くべきかを考えているようだった。

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