小芝風花が『大奥』で披露した演技の幅の広さ 最後に倫子の笑顔を見られることを願って
将軍からの寵愛を得ようともがく女たちとその裏で幕府を意のままにしようとする男たち……。さまざまな人間の思惑、嫉妬、憎悪、悲哀が渦巻いている『大奥』(フジテレビ系)がついに最終回を迎える。
本作の主人公は小芝風花が演じる五十宮倫子。倫子は皇室の血を引く公家の娘で、人を疑うことのない、純真で優しい性格の持ち主。その一方で芯は強く、利発な女性でもあった。倫子は京で素直に育っていたが、朝廷と幕府の橋渡しとして、次期将軍である徳川家治(亀梨和也)と政略結婚をさせられてしまう。最初は愛のない夫婦としての生活に疑問を感じていたが、ふとしたことをきっかけに、倫子は自分が家治に恋をしていることに気がつくのだった。
そうなれば待っているのは、家治からの愛を巡る熾烈な戦いだ。倫子は将軍正室であったがなかなか子ができなかった。幕府に嫁げば世継ぎである男児を生むことは“やらなければならないこと”の一つである。できなければ、他の女性に生んでもらうしかない。そのために将軍は、側室として正室以外の女性とも関係を持つことができるのだが、家治はあろうことか、倫子の付き人であったお知保(森川葵)やお品(西野七瀬)を側室にするのである。実はそこに家治の意思はなく、松島(栗山千明)や田沼意次(安田顕)の策略があったのだが、倫子がそれを知る由はなく、心が揺り動かされていく。
倫子にとってはお知保やお品は裏切り者と言っても過言ではない。だから2人に冷たい態度をとってもしかたないと思えるのだが、倫子はどんなことがあっても周囲に思いやりを忘れず、お知保やお品にもできるだけ温かく接していた。御台としての役目もしっかりとこなそうとし、いつもなら大奥の女中たちに任せている参詣も自ら出向いた。それに知性があった倫子は家治の「身分によって分断されない世を作りたい」という志にも理解を示し、「一緒に叶えたい」と目を輝かせた。
恋に溺れすぎず、人としての大事なことを見失わなかった倫子。小芝はそんな倫子をいろいろな表情で表現してみせた。家治から大きな理想を語られた時の倫子は、無邪気に喜んでおり、まるで少女のようだったし、御台として大奥の大勢の女中たちや田沼を目の前にした時の倫子は、隣に座している家治と同じくらい凛々しかった。そして、家治と自分が互いに思い合い、支え合っていると実感している時の倫子は、とても可憐だ。家治は時々、衝動に任せて倫子を引き寄せ、抱きしめているが、その気持ちもわかるような気がする。