『セーラームーン』『カードキャプターさくら』 『なかよし』アニメの大きすぎる影響力

 4月から、創刊70周年と漫画家・遠山えまのデビュー20年を記念したアニメ作品が放送される雑誌『なかよし』。

 20代前半の筆者は、なかよしの人気作品『美少女戦士セーラームーン』より少し下のプリキュア世代。だが、アニメのDVDや実写ドラマで『セーラームーン』をひたすら目にし、「ムーンライト伝説」をフルで歌えるほどの教養は身につけた。

 『セーラームーン』を含む『なかよし』の作品たちが日本文化の発展にどれほど寄与してきたか? すべてを書くと1記事には収まらないため、今回は『なかよし』の中でも人気の高い『セーラームーン』『カードキャプターさくら』が後の二次元文化にもたらした影響を考察したい。

 単なる少女向け作品にとどまらない、『なかよし』発のアニメがもつ力の片鱗を探る。

美麗な変身の先駆けに?『セーラームーン』

 1992年2月号の連載開始から30年以上経った現在も、世界中で愛されている『セーラームーン』。

 2024年にも大阪や名古屋での展覧会や乃木坂46による実写化ミュージカルが控える同作は、女性を主役にした変身ヒロインアニメの元祖とも言える存在だ。

 その影響は実に大きく、小学館『ちゃお』に連載されていた作品『キューティーハニーF』の解説に「『美少女戦士セーラームーン』の系譜を継ぐ、正統派の変身ヒロインアニメ」と名前が登場するほど。

 出版社の枠を超えて作品に変化をもたらし、人気の高い変身ヒロインアニメを新たに生み出すほどのビッグタイトルだったことが伺える。

 なお、同作が人気を博した要因として外せない点が、変身シーンの美しさだ。

 『セーラームーン』より前のヒロインの変身は、月野うさぎが披露するような、全身がリボンに包まれティアラが登場……といった胸の高鳴りが止まらない描写とは言い難い場面が大半だった。

 同作が登場する前ももちろん変身ヒロインアニメは多数あったわけだが、それらの作品で描かれる変身の多くは同作の描写よりもかなり寂しい。

 有名呪文“テクマクマヤコン”を使う『ひみつのアッコちゃん』の変身は一瞬で終わるし、『魔法使いサリー』に至っては通常の姿に近い状態で魔法を使うためそもそも変身シーンは無し。

 しかし、『セーラームーン』アニメの放送が始まった1992年以降、戦うヒロインを主役としたアニメの変身シーンはどんどん美しくなっていく。

 1999年放送開始の『おジャ魔女どれみ』、2004年放送開始の『ふたりはプリキュア』などの変身シーンはどれもかわいく、変身アイテムも多様な形でグッズ化されている。

 後の作品の美しい変身が多くの少女の胸をときめかせたことを考えれば、同作の功績がいかに大きいかがわかるのではないだろうか。

 加えて、『セーラームーン』はいまや日本の2次元文化の一翼を担っている“2.5次元ミュージカル”を世に広める大役も果たす。

 漫画を原作とした舞台化作品の元祖としては1974年に宝塚歌劇団が上演した『ベルサイユのばら』が有名だが、正直に言って宝塚歌劇団の舞台は一般人には少し縁遠いものもある。

 そんななかで、バンダイが中心となって制作された大衆向けの舞台が1993年開始のミュージカル『美少女戦士セーラームーン』だったのだ。

 その後、舞台版『テニスの王子様』が大ヒットとなり2.5次元ミュージカルは勢力を拡大するわけだが、その陰に『セーラームーン』の存在があったといえるのではないだろうか。

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