『るろうに剣心』『うる星やつら』『SLAM DUNK』 相次ぐアニメリメイク、成功の鍵は?

『るろうに剣心』などリメイクの成功の鍵は?

 近年、アニメ作品のリメイクが相次いでいる。7月7日から始まった『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』は、1996年から1998年にかけて放送されたもののリメイク。劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』前後編で完結を迎えた『美少女戦士セーラームーン』も、1992年から1997年にかけて放送された作品だった。2022年12月からロングランが続く映画『THE FIRST SLAM DUNK』も、1993年から1996年にかけてTVアニメ化されていた。どうしてこれほどまでにアニメのリメイクが盛んなのか?

 「おろ」という台詞がどう聞こえるか。新しい『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』で誰もが強い興味を抱き、耳そばだてていたところに響いた斉藤壮馬演じる緋村剣心の「おろ」は、好評をもって迎え入れられたようだった。

 1996年から放送されたTVアニメ版では、宝塚のトップスターだった涼風真世が長く剣心を演じた。その前に出たCDブックでは、緒方恵美が剣心役だった。そうした経緯から、剣心といえば女性声優が演じるものという印象が残っている人に、男声では違和感を覚えるかもといった懸念があった。

 ヒットした作品であればあるほど、キャラクターは声と結びついて記憶される。映画『THE FIRST SLAM DUNK』では、桜木花道をはじめ湘北高校バスケ部のメンバーの声が、TVアニメ版から全員交代していたことに当初、激しい反発が起こった。『るろうに剣心』の場合は、演じる役者の性別も変わる。どんな雰囲気になるのかと誰もが思って当然だ。

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 そうした壁を、斉藤壮馬の剣心はスッと乗り越え、視聴者を作品の世界へと引き込んだ。実写映画で佐藤健が剣心役を演じきったことも、男声への違和感を薄くしていたのかもしれない。あとは原作が持つ力があればいい。幕末に維新の志士として大勢を斬り殺して来た緋村抜刀斎が、明治維新後の日本で新しい出会いをし、過去の宿敵と戦いながら抱えていた自責の念を乗り越え、生き方を模索していく大河ロマンが、最後まで引っ張っていってくれるはずだ。

 『るろうに剣心』は、原作漫画が1994年のスタートから30年近くが経った今も継続中だ。「北海道編」と銘打たれたシリーズで、新たな敵との死闘が繰り広げられている。リメイク版がそこまで描く予定なのか、新キャストを得て今のアニメの技術を用い、スピーディでスリリングな剣客バトルを描いて楽しませようとしているのかは不明だが、新連載のように物語を愉しみたい人に、リメイク版は大いに役立つだろう。

 『るろうに剣心』のような描き直しへの期待は、映画の大ヒットを受けて『SLAM DUNK』にも及びそう。原作のストーリーをそのまま描いていったTVアニメ版とは違い、映画はインターハイでの山王工業との戦いだけを描き、主人公を宮城リョータにして彼の成長と戦いを軸にストーリーを進めた。これにより単体で楽しめる作品となって新しいファンの支持を得た。前からのファンもスリリングな展開に呑み込まれて、前とは声が違うことを忘れさせられた。

 次は桜木花道の物語だと期待したいところだが、原作者の井上雄彦が監督を務め、上がって来た絵に徹底的に手を入れて作り上げたからこその面白さだったこともあり、それと同じ労力をTVシリーズに求めることは難しい。ここは再び映画として誰かのエピソードが紡がれる可能性に期待する方が、新旧ファンの納得も得られそうだ。

 懐かしさをアピールしては多くに届かず、新しさをアピールすると反発を食らう。アニメのリメイクの難しいところで、その中間を巧みに進んだのが『うる星やつら』だろう。高橋留美子の人気漫画が原作で、最初は1981年から1986年にかけてTVアニメ化や劇場アニメ化された。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の押井守が関与していたことで、ギャグがあり衒学趣味もあってとマニア心をくすぐるアニメとなった。

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 この時の印象が強すぎて、古手のファンには2022年10月から2023年3月まで放送され、2024年に第2期の放送も決まっている新しいアニメは、物足りなく思えたかもしれない。ただ、連載中に絵柄が変化し旧作のアニメでも作画が変わった『うる星やつら』で、最高に可愛いラムちゃんを選び抜くようにして設定したところがある新版は、観ていてまったく隙がない。

 声についても、上坂すみれに神谷浩史に宮野真守に内田真礼に沢城みゆきと、旧作を踏襲しながらもモノマネではない声優陣を並べ、誰にも異論を起こさせない。そうした丁寧さがかえって印象を薄めてしまっている感じもあるが、原作とともに長く愛される作品にはなりそうだ。

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